ユーエスがはじめて米国株を学ぶブログ

米国株投資を始めて3年目に突入。米国株初心者が学んだことを記録していきます。

書籍『サブスクリプション』は投資家にとっても学ぶことが多い。Adobeの事例に見るAppleとの共通点とは

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最近読み始めた『サブスクリプション』が面白いです。投資家目線でも学ぶことは多いと思います。

 

 

ズオラ(Zuora)CEOの著書『サブスクリプション』

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

  • 作者: ティエン・ツォ,ゲイブ・ワイザート,桑野順一郎,御立英史
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018/10/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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サブスクリプション管理のSaaSであるZuoraについては当ブログでも何度か触れてきましたし、実際に投資もしてきました。

そのZuoraのCEOであるティエン・ツォ(Tien Tzuo)氏が執筆したのがこの『サブスクリプション』です。原題は『Subscribed』で今年の6月にリリースされています。非常にタイムリーな書籍ですね。

 

本書は大きく二部構成で、一部ではサブスクリプションがどのように業界を変えているかを事例とともに解説し、後半の二部でサブスクリプションを実際にビジネスに適用する際の方法について説明しています。

 

『サブスクリプション』が投資家にとっても学びが多い理由

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先日にトヨタが車の月額乗り放題サービスを発表しましたね。国内の自動車メーカーにもついにサブスクリプションの波がやってきました。

 

今まではソフトウェア企業やSaaS等のクラウド企業だけがサブスクリプション方式を採用するものと考えていましたが、もはや製造業やハードウェア企業がサブスクリプション方式で事業開発することは当たり前な印象です。

 

もちろん全ての企業がサブスクリプションでビジネスをするわけではないですが、確実にその方式を採用する企業は増えているのではないでしょうか。

 

そうなってくると、投資家として自分のポートフォリオを眺めてみると、従来の売り切り型のビジネスからサブスクリプションへ乗り出している銘柄がいくつかあっても不思議ではないですね。

 

例えば生活必需品セクターのP&Gが持つ髭剃りブランドのジレット(Gillette)。今まではジレットとシック(Schick)の2社だけで市場の8割を占める寡占市場でしたが、そこにサブスクリプションで替刃を提供するDollar Shave ClubやHarry'sが登場し、じわじわと市場シェアを侵食していきました。P&Gも危機感を感じたのか独自のサブスクリプションサービスを開始しました。

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事情はどうであれ、老舗の企業でもサブスクリプション事業を始めることは珍しくなくなるのではと思います。その際に決算発表や決算レポートを見るにあたって、従来の見方とは異なるサブスクリプションに特化した観点で企業の事業状況を判断しなくてはいけないですね。例えば年間定期収益(ARR:Annual Recurring Revenue)や解約率(Churn Rate)などの指標が重要となってきます。

 

そうしたサブスクリプション企業の読み解き方を学ぶという意味で、本書『サブスクリプション』は投資家にとっても大事と思うわけです。

 

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Adobeの事例、Appleの置かれた状況

サブスクリプションといえばAdobeというくらいに、Adobeはサブスクリプションへの移行に大成功した企業ですね。ビジネススクールの題材としてもよく取り上げられるそうです。

 

本書でも企業事例の1つとしてAdobeは登場します。なぜ彼らが従来のソフトウェア販売事業からサブスクリプションに移行したのか、当時の状況について以下のように触れています。

アドビにサブスクリプション方式への移行を急がせたものはなにか?ソフトウェアのライセンス事業は同社にとって金のなる木で、2011年に34億ドルを売り上げ、その粗利益率はなんと97%という高さだった。

(中略)

だが、いくつか厄介な兆候があった。アドビの事業拡大はおもに価格上昇の結果であり、ユーザー数は増加していなかった

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

粗利益率が97%というのも凄いですが注目すべきは最後の一文です。2011年のAdobeは、製品の価格上昇に支えられて事業拡大しており、そのユーザー数は頭打ちだったことが伺えます。

 

この状況を読んで既視感を覚えませんか?まさに先日に記事にしたAppleの置かれた状況と非常に似ているなと私は思いました。

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Appleの現状は主力商品のiPhoneの販売台数が頭打ち状態です。iPhoneの平均販売価格は徐々に上がってきていますが、それもいずれは限界が来るでしょう。

両社をまとめるとこういう状況です。

Adobe(2011年)

  • ユーザー数:頭打ち
  • 事業拡大:製品の価格上昇のおかげ

 

Apple(2018年)

  • iPhone販売台数:頭打ち
  • 事業拡大:iPhoneの平均販売価格の上昇のおかげ

 

Adobeの場合は2012年5月にサブスクリプションのAdobe Creative Cloudを開始しました。その後の躍進は皆さんもご存知の通りです。株価も2013年頃から上昇トレンドを描き始めていますね。

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Appleの場合はどうなるでしょう?今後はサービス事業によりシフトしていくのではと言われていますね。

おそらくiPhoneがキーになるのは変わらないでしょうが、Apple MusicやiCloudとは違う新たなサブスクリプション方式のサービスを始めることも有り得そうです。Apple Watchと組み合わせたヘルスケアサービスなども想像できますね。他の企業と連携したエコシステムを作っていくことも考えられます。

 

Appleに限らず現状に行き詰まりを感じている企業は少なくないでしょうね。そうした企業のいくつかはサブスクリプションに乗り出すことを検討しているかもしれません。未来はどうなるか分かりませんがひとまず『サブスクリプション』を読んで新事業を見る目を養っておきます。

 

 

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

  • 作者: ティエン・ツォ,ゲイブ・ワイザート,桑野順一郎,御立英史
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018/10/25
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