コミュニケーションツールのSlackがNY証券に上場しました。初日から株価は上昇しておりスタートは問題なかったみたいです。
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SlackがNY証券に上場。参考価格は26ドル、オープンは38.5ドルに
コミュニケーションツールを提供するSlackが6月20日NYSEに上場しました。ティッカーシンボルはWORKです。今年にIPOが噂されるWeWorkが欲しそうなティッカーを先に頂いた形ですね。
Slackは直接上場を選択
Slackは直接上場(ダイレクトリスティング)という方法を選択して上場しました。通常、IPO時には幹事役の金融機関を雇って色々と手続きを経て上場するものです。最近では音楽ストリーミングサービスのSpotifyが同じ方法で上場して話題となりましたね。
企業が新規株式公開(IPO)する場合、一般的には複雑な手続きを踏むことになっている。上場までのシナリオを描いてくれる金融機関を雇い(何百万ドルもの費用がかかる)、「ロードショー」と呼ばれる投資家へのお披露目をして、自社株の需要がどの程度あるかを探り、購入の事前申し込みと抽選を行う。
上場当日は、最高経営責任者(CEO)が証券取引所で誇らしげに取引開始の鐘を鳴らし、息つく間もなく「どうも恐縮です」などと言いながらメディアの取材に応じる。その間に、証券会社のスタッフは初日の取引が滞りなく進むよう、注意深く公開株を流通させる。
直接上場はこうした手続きをすべて無視した手法だ。
通常のIPOではなく直接上場を選ぶ理由はいくつかあるようです。そもそもIPOする理由は市場からの資金調達が大きな理由の一つですが、直接上場を選ぶ場合は資金調達はあまり重要ではないみたいですね。
またIPO時にはVCなどの大株主が一定期間(通常は半年)株の売買を禁止するロックアップ期間を設けますが、直接上場を選択することでその期間を無しにでき、株を保有する従業員も自由に売買できるようになります。
Slackの場合も基本的にはそういった理由から直接上場を選んだみたいですね。
スラックの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のスチュワート・バターフィールド氏は20日、伝統的なIPOを選ばなかったのは実利的な理由のためであり、現金を必要としていないからだと説明。ロックアップ期間を避けたかったことも理由だとした。
取引初日から株価は上昇
直接上場を選択したSlackは上場前に参考価格として26ドルになると伝わってきていました。そして上場初日に初値が38.50ドルと参考価格を大きく上回る値がついて取引開始されました。
その後、一時は42ドルまで上がりましたが、あとはスルスルと少し値を下げて今は37ドル付近で落ち着いています。
先程のBloombergの記事によれば今年上場したテクノロジー企業の中ではUber(750億ドル)に次ぐ時価総額195億ドルになったとのことです。ちなみにLyftは180億ドルとのことでした。
今後も高成長をキープできるか
Slackの四半期売上高の成長率推移:
— ユーエス🇺🇸米国株投資🍺🥃🍷🍶 (@us_stock_invest) 2019年6月10日
19Q1:89%
19Q2:79%
19Q3:82%
19Q4:78%
20Q1:67%
20Q2:52%(見込み)
今月末のIPOを前に、成長の鈍化が気になるところ pic.twitter.com/DTdIZAYuDN
Slackの1年半の四半期売上高の成長率を見ると、少しずつではありますが減少傾向にあります。
+50%成長でも十分にすごいですが、このまま下がり続けるのはちょっと心配になりますね。
Slackの成長の余地はまだ多いとは思います。日本でも導入は進んでいる状況ですしね。
まずは上場後初の四半期決算を迎えたときに無事に市場予想をクリアできるか見届けたいですね。
その他のSlack概要は下記を参考ください。
Slackが最大のライバルと認めるMicrosoft、社内でのSlack利用にいい顔はしない
SlackはIPO申請時に提出したS-1の中で主要な競合企業はMicrosoftだと述べていました。(上記記事参考)
MicrosoftはOficce 365の中でMicrosoft TeamsというSlackによく似たコミュニケーションツールを提供しています。
MicrosoftがTeamsを発表したのは2016年11月のことです。
それに対し、SlackはNew York Timesの一面広告を使って早速反応していました。この分野への参入は歓迎するが、単に真似するだけではダメだよ、といった感じですかね。
それから2年半ほど経過していよいよSlackも上場したわけですが、当のMicrosoftがSlackの社内利用について基本的には禁止しているという内部情報が伝わってきました。
この記事によると、
- Microsoftではセキュリティの懸念から社外のツールやサービスに関して「利用禁止リスト」と「利用非推奨リスト」を規定している。
- Slackはフリー、スタンダード、プラスの利用プランについては「利用禁止リスト」に載せられている。
- 大企業向けのSlack Enterprise GridはMicrosoftのセキュリティ要件を満足するもの、「競合のソフトウェアを利用するよりは、Microsoft Teamsを利用することを推奨」している。
とのことで、Slackは基本的には利用禁止のスタンスを取っているみたいですね。主な理由はセキュリティですので闇雲に競合製品を否定する訳ではなさそうですが、本音としては自社のTeamsを使って欲しいのでしょう。
その他の競合企業についても、
- Amazon Web Services(Microsoft Azureのライバル)とGoogle Docs(Officeのライバル)については、利用するには「業務上の正当な理由」が必要。
- Microsoftが買収したGitHubは、クラウド版の利用は「非推奨リスト」に載っている。理由はやはりセキュリティ上の懸念から。オンプレミス版はOK。
- OfficeのアドオンでもあるGrammarlyもセキュリティの観点から「利用禁止リスト」入り。
といった状況です。まず第一に情報漏えいなどのセキュリティ上の問題がありそうなサービスは利用禁止か非推奨ということで、Microsoftに限らず大手企業では当たり前の措置とも言えますね。
AWSとGoogleについてはMicrosoftも十分戦えるサービスを持ってますし、確かにわざわざ利用する正当な理由を要求しても不思議ではないかなと。恐らく競合調査などですかね。それほどセンセーショナルに捉える必要はなさそうです。
何はともあれSlackとMicrosoftがライバル同士なのは間違いないですし、今後もSlackの投資機会を考える上でも両社の動向には注意しておこうと思います。