CDNやエッジコンピューティングを手がけるFastlyがNY証券取引所に上場して取引開始しました。初日から株価は大きく上昇しましたね。
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CDN、エッジコンピューティングのFastly、NY証券取引所に上場
コンテンツ配信ネットワーク(CDN)やエッジコンピューティングを手がけるFastlyがNY証券取引所に上場しました。ティッカーシンボルはFSLYです。
Fastlyは先月にIPO申請していました。時期的にUber、Zoom、PinterestなどのIPOとかぶってしまってあまり話題になっていない印象ですが、個人的には非常に将来性の高い企業だと思っています。
Fastlyの主要サービスの1つはコンテンツ配信ネットワーク(CDN)です。近年のWebサイトはニュースにしろ動画にしろ非常に多くのコンテンツで構成されていますが、これらをユーザの近くに効率的に配信したりキャッシュとして蓄えたりといった部分をFastlyが担っています。これによりユーザは非常に高速にWebサイトを閲覧したりストリーミングを安定して楽しんだりできるわけですね。
FastlyのCDNは性能や安定性、機能性で評判が高く、あのGoogleも自社クラウドサービスの一部でFastlyのCDNを採用しています。Google自身がCDNサービスを持っているにもかかわらず、です。
さらに今後はエッジコンピューティングの領域にFastlyは拡大していきます。エッジコンピューティングとは、従来データセンタで実行していたデータ処理を、よりユーザーに近いところでデータ収集・処理を実行してしまおうという考え方です。
IoTやウェアラブル・デバイスの増大により、機器や人が生み出すセンサーデータや画像・音声データはますます増えていますが、それらを遠くのデータセンタに送信して処理するとなると、大量のデータがネットワークを流れて逼迫しますし、またデータを処理して結果を返すまでの時間も伸びてしまいます。
そこで、それらデータが生まれる場所やその近くでデータ収集と処理をすることで、よりリアルタイムにデータ分析ができ、ユーザのサービス体感も向上するわけですね。
Fastlyはエッジコンピューティング時代に向け独自の技術開発も進めています。今まではクラウドコンピューティングが時代の主役でしたが、5Gの実現が進むに連れてFastlyのようなエッジコンピューティングベンダが徐々に主役となっていくかもしれませんね。
FastlyのIPO、初日は+50%も株価上昇
Fastlyは17日に16ドルで値決めされて取引開始しました。
取引開始後すぐに株価は上昇し、およそ+50%の23.99ドルで初日の取引を終えました。
なかなか大きな期待を集めたと言えるのではないでしょうか。
Fastlyのビジネス概況
2018年の売上高約1億4,500万ドル
Fastlyの2018年度(12月期)の売上高はおよそ1億4,500万ドルで、2017年から+38%の成長でした。
営業利益、純利益はまだ赤字ですが、2018年は少し赤字幅が改善していますね。
四半期ごとの売上高の推移です。
全体としては順調に成長中で、特に最近は成長の傾きがより急になっているように見受けます。
顧客数も成長中
Fastlyのキー・ビジネス・メトリクスを見てみましょう。まずは顧客数の推移です。
顧客数は着実に伸びており、2019年Q1(3月期)の時点で1,621顧客(フリートライアル含む)となっています。
顧客のうち、年間売上高(ARR)が10万ドルを超える顧客の数も伸びてますね。こちらは2019年Q1で243顧客になりました。
Fastlyの顧客には、ニュースサイトのニューヨーク・タイムズ、ストリーミングサービスのHuluやSpotify、テック企業ではSlackやMicrosoft、そのMicrosoftが買収したGitHubなどが挙げられます。業界別では下記のような顧客がいます。
そんな顧客あたりの売上高の増分を示すNet Expansion Rateは130〜140%台で推移しています。
サービス基盤はAWSやGoogle、競合情報など
SECファイリングによればFastlyのサービス基盤を支えるのはAmazon Web Services(AWS)やGoogle、Softlayer(IBMが買収)など複数のクラウドサービスとのことです。
これらクラウドサービスを有効活用しながら、逆にAmazonやGoogleがFastlyのサービスを使っているわけで、良い共生関係が築けていますね。
Fastlyの競合には既存のCDNプロバイダやクラウドサービスなど、非常に多岐にわたる相手が存在します。SECファイリングから競合を抜き出してみましょう。
- レガシーCDN:Akamai, Limelight, EdgeCast (part of Verizon Digital Media), Level3, and Imperva
- SMB向けCDN:InStart, Cloudflare, StackPath, and Section.io
- クラウドプロバイダ:Amazon’s CloudFront, AWS Lambda, and Google Cloud Platform
- データセンタベンダ:F5, Citrix, A10 Networks, Cisco, Imperva, Radware, and Arbor
この中でCloudflareは今年のIPOが噂されるサービスベンダで、Fastlyとは直接のライバルと言えそうです。今回のFastlyのIPOの結果を見て、彼らもどう動くか考えているのではないでしょうか。
今後の5Gの展開やIoTの普及の中で、Fastlyのエッジコンピューティングへの取り組みにはとても期待しています。将来性の高い分野ですので、ぜひ今後もウォッチしておきたい企業ですね。

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