歯列矯正マウスピースを提供するSmileDirectClubがNasdaq上場間近のようです。
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歯列矯正マウスピースで急成長のSmileDirectClubが上場準備中
歯列矯正マウスピースを提供するSmileDirectClubが上場に向けてS-1を提出しました。
上場先はNasdaqで、ティッカーはSDCを予定しています。
SmileDirectClubの歯列矯正マウスピースは上のような透明な素材でできています。歯に装着しても目立ちにくいのが特徴ですね。
SmileDirectClubのマウスピースは1,895ドル(または分割払い)で手に入れることができ、従来の歯列矯正治療が6,000〜8,000ドルかかることを考えると1/3〜1/4の費用で歯列矯正できるとのこと。
またSmileDirectClubは専門医の診察なしでマウスピースを提供できる点も特徴です。近所のSmileDirectClubの店舗に行って3Dスキャンするか、自宅で歯型を取るキットを使うかのどちらかで診断が完了し、あとは送られてくるマウスピースを使えばOKです。
定期的な治療診断もリモートから専門医が確認してくれるとのことで、直接お医者さんに対面することなく歯列矯正を進めることができます。だいたい6ヶ月ほどで治療完了みたいですね。
こういった透明な歯列矯正マウスピースの市場を切り開いたのはおそらくAlign TechnologyのInvisalignだと思います。ただSmileDirectClubとAlign Technologyはあまり競合関係にはないようで、先日のAlign Technologyの四半期決算でも両社の重複ドメインは10%ほどだと経営陣は述べてました。
SmileDirectClubの競合は自宅での歯列矯正を対象とするスタートアップですね。たとえば下記のCandidが挙げられます。
こういった歯列矯正のスタートアップが突如出てきた理由は、Align Technologyの基本特許が特許期間満了となってことが大きく関係しているようです。
自宅で手軽に矯正できることはメリットでもありデメリットでもある
SmileDirectClubは安価に自宅で歯列矯正できるサービスですが、どんな歯並びでも治せるわけではありません。手軽さの裏には制限がついてきます。
こちらの方が詳細なレポートを書いてくれていますが、基本的には対象は前歯のみで、軽度〜中度くらいの症状のみ矯正可能なようです。
症状が重い場合や奥歯を矯正したい場合は、やはり専門医の診断のもとで治療を受ける必要がありそうです。このへんがAlign Technologyとも競合しない部分なんですかね。
こちらの記事でも、SmileDirectClubは「医療というより美容」と書かれており、またアメリカ矯正歯科学会がこういった歯科医の診断がないサービスを問題視している現状を伝えています。すでに訴訟も起こされたケースがあるようです。
低コストに歯列矯正をできる反面、こういった点が今後もリスクになりそうです。
売上高は急成長
2017年度と2018年度(12月期)の売上高と純損失の比較です。
売上高は2017年度が約1.46億ドル、2018年度が約4.23億ドルということで、約2.9倍に伸びています。まさに急成長ですね。
純損失も同じく拡大中で、2018年度は7,477万ドルの損失でした。しばらくは成長に投資するでしょうから仕方ないかと思いますね。
2019年Q2(6月期)の売上高は約1.96億ドルでした。既に2017年度の売上高を上回っていますね。
こうして見ると安定な成長というよりは急上昇する期がいくつかあるようです。2019年に入ってからも大きく売上高を伸ばしており、今後の成長にも期待が持てそうです。
キーとなるビジネス・メトリクス
ユニークなアライナー出荷数は下記のとおりでした。こちらも2.9倍近く伸びてますね。
- 2017年度:90,023個
- 2018年度:258,278個
また平均単価は次の通りです。製品価格の1.895ドルを下回っているのはディスカウントを適用した会員がいたためです。
- 2017年度:1,729ドル
- 2018年度:1,764ドル
SmileDirectClubはWebサイトで会員登録してもらうのも重要な流入チャネルで、そのためWebサイトの訪問者数も大事なメトリクスとなります。
現在のところ、月間で約500万ユニークユーザがWebサイトを訪問しているとのことです。このうちの何%が実際に会員登録してくれるかですね。
巨大な歯列矯正市場の中でSmileDirectClubはシェアを伸ばせるか
彼らのS-1の説明によれば、全世界で85%の人は何らかの不正咬合を持っていますが治療を受けている人は1%にも満たないようです。
このうちSmileDirectClubのターゲットは米国に約1.24億人、全世界で約5億人も存在するとのこと。先程の出荷数では約26万個を2018年に出荷していますので、市場機会は十分に大きいですね。
一方で、急成長中の市場だけあって上で触れたCandidなどのスタートアップが続々と登場している状況でもあります。SmileDirectClubがこういった競合とのシェア争いでしっかり数字を伸ばせるか注目ですね。
また歯科医の診断をスキップしたお手軽な歯列矯正には治療失敗に伴う訴訟リスクも懸念されます。そういったリスクをどこまで排除できるかですね。
SmileDirectClubには色々と心配な面もあるのは確かですが、巨大な市場機会と実際にSmileDirectClubが急成長している点は魅力的ですね。上場の日に向けてもうちょっと調べてみて投資機会を検討してみたいと思います。