今週に四半期決算を発表したばかりのソフトウェア会社オラクルですが、決算発表後に株価が10%近くの急落となりました。一体何が原因で急落したのでしょう。
オラクル(ORCL)の概要と四半期決算
オラクル(ORCL)概要
オラクル社は、データベース管理システム(DBMS)を中心とした企業向けソフトウェアの開発、販売を行っている。また多数の買収によりソフトウェア市場でのシェアを高めており、2007年にはマイクロソフトとIBMに次ぐ世界で第3位のソフトウェア会社となり、更に2008年にはBEAシステムズの買収によりIBMを抜いて世界で第2位となった。
オラクルは元々はデータベースで有名なソフトウェア会社ですね。2000年前半から企業買収を積極的に進め、今やありとあらゆる企業向けソフトウェアを保有する会社となりました。
ライバルにはマイクロソフトやIBMが挙げられます。
オラクル(ORCL)の四半期決算
Oracle beats by $0.11, revenue in-line - Oracle Corporation (NYSE:ORCL) | Seeking Alpha
- EPS:0.83ドル(予想を0.11ドル上回る)
- 売上高:97.8億ドル(予想と一致)
オラクルの2018年第3四半期決算はEPSが予想を上回るものの売上高は予想通りという内容でした。
特にクラウドサービスの売上高が前年同期比で+32%の高成長だった点が良かったようです。
全体的にはまずまずといった決算内容だったみたいですね。
オラクルの株価が急落の理由
決算自体はまずまずでしたが、同社のクラウドサービス事業の成長が実は鈍化し始めていることがわかり、株価の急落を招いたようです。
決算発表後の急落は下記のグラフの通りです。3/20にストンと株価が落ちてしまいました。
チャートで見るオラクルの四半期決算
売上高(単位:百万ドル)
四半期の売上高比較です。今回の売上高は約98億ドルで、+6%の成長でした。
売上高の内訳(単位:百万ドル)
売上高の内訳では、既存のソフトウェア・ライセンスの更新に伴う売上が最も大きく、全体のおよそ51%を占めています。
次いで大きいのはクラウドサービスの売上高ですね。グラフの通り、前年は新規のライセンス売上の方が大きかったですが、2018年Q3の決算ではクラウドの売上高の方が大きくなりました。クラウドの売上高は全体の約16%を占めています。
売上高の成長率
前年同期比で見た場合の売上高成長率の比較です。見ての通りクラウドサービスの成長率が他と比べて圧倒的に大きく、32%の成長でした。
その他はマイナス成長がほとんどで、唯一ライセンス更新だけはプラス成長でした。ただ新規ソフトウェア・ライセンスがマイナス成長ですので、このライセンス更新に伴う売上も大きな成長は見込めないのではと思います。
今のオラクルにとって、成長事業と呼べるものはこのクラウドサービスということになりそうです。
クラウドサービスの成長比較(単位:百万ドル)
クラウドサービス単体の売上高を四半期ごとに並べたグラフです。
Q1では51%と非常に高い成長率を見せていましたが、その後のQ2、Q3で成長率は44%、32%と徐々に下げていることが分かります。
次のQ4について、オラクルは成長率19%〜23%になるとガイダンスを発表しており、成長率の低下が止まらない状況であることが見えてきました。
仮にQ4のクラウドサービス売上高の成長率が予想中間値の21%だった場合は、各四半期の成長率は下記のようなグラフとなります。2017年Q3以降は成長率が年々減少しており、このペースで落ちていくと半年ほどで成長率がほぼゼロになってしまいそうです。
オラクルの事業の中で唯一の成長事業と言ってもよさそうなクラウドサービスですが、売上高の比率ではまだ全体の16%ほどで、さらにその成長率も年々減少していることから、同社のクラウド事業への移行に暗雲が立ち込めていると市場は判断したのでしょう。その結果が株価の急落だったのだと思います。
オラクルとしてはクラウドサービスの売上を改善する手を何か打たなければ投資家へのアピールにならないでしょうね。
また個人投資家としては、企業が成長事業と位置づけている事業が何かを把握し、その成長に疑問が生じたら株を手放すことも検討するべきだと学びました。
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