アドビ・システムズが2018年第1四半期の決算を発表しました。彼らのサブスクリプション型ビジネスへの転換が非常に好調で、この四半期決算も良好な内容でしたね。
アドビ・システムズ(ADBE)の2018年第1四半期決算
- EPS:1.55ドル(予想を0.11ドル上回る)
- 売上高:20.8億ドル(予想を3,000万ドル上回る)
- ガイダンス:2018年第2四半期の売上高:21.5億ドル(予想:21.4億ドル)、EPS:1.53ドル(予想:1.51ドル)
アドビ・システムズの2018年第1四半期決算はEPS・売上高・ガイダンスの全てでコンセンサス予想を上回る好調な内容でした。
中でもサブスクリプションの売上の成長が大きかったようで、彼らのビジネスモデルの転換が引き続き好調なことを示していますね。
好調な決算により同社の株価も大きく上がりました。
チャートで見るアドビ・システムズの決算内容
売上高の比較(単位:億ドル)
前年同期との売上高比較です。2017年Q1の16.82億ドルから20.79億ドルに大きく伸びました。
売上高の成長率はおよそ23.6%になります。
ビジネス形態ごとの売上高(単位:億ドル)
ビジネス形態ごとの売上高をみると、ほぼサブスクリプションが占めていますね。すっかり製品売り切り型のビジネスから定期契約のサブスクリプション型にビジネスを転換したことが伺えます。
前年同期比で見ても、サブスクリプションは約30%ほど売上高が成長している一方で、製品とサービス&サポートは同じか減少となっています。
特に製品部門は徐々にサブスクリプション型へ転換させていくと思いますので、このまま売上高もサブスクリプション部門に推移していくでしょうね。
セグメント別売上高(単位:百万ドル)
アドビのセグメント別に売上高を見てみます。製品セグメントは大きく3つになります。
- Digital Media・・・PhotoshopやIllustratorを含むCreative関連と、PDFや電子サイン関連を扱うDocument Cloud関連
- Digital Experience・・・デジタル広告・デジタルマーケティング・分析を扱うExperience Cloud関連
- Publishing・・・DTP関連等、その他製品群
売上高の伸びを見ますと、CreativeとDocument Cloudを含むDigital Media部門が大きく成長しています。2018年Q1は14.6億ドルの売上高で、全体の約70%を占めていました。アドビの稼ぎ頭と言えそうですね。
次いでデジタル広告配信やマーケティング関連を扱うDigital Experence部門が売上高が大きいです。今は全体の約26.6%ほどになっていますね。
最後のPublishing部門は古いアドビのソフトウェア群をまとめているようです。メインのビジネスがサブスクリプション型になったため、この部門はこのまま縮小していくのでしょう。
今のアドビは大きくCreative(Creative Cloudを含む)、Document Cloud、Experience Cloudの3つのサービス部門に支えられているようです。
主要な3サービス部門の売上高推移(単位:百万ドル)
主要3サービス部門の四半期ごとの売上高推移です。3サービス部門の中では特にCreativeサービスの成長が最も大きいことが分かりますね。売上高も一番大きいですし、Creativeサービスがアドビの中心ビジネスと言ってもよさそうです。
広告・マーケティング関連のExperience Cloudも成長傾向にあるようですが、まだまだ物足りないですね。この分野は大手ではSalesforceやOracleが同様にマーケティングサービスを提供しており、さすがのアドビも苦戦しているのかもしれません。
Document Cloudはほぼ横ばいな売上高推移ですね。PDF自体はビジネスで標準ドキュメントの地位を得ていると思いますが、言い換えれば成熟しきった製品と言えるかもしれません。電子サインなどの新しいサービスがもう少し存在感を示せるといいですね。
プラン価格の引き上げが吉と出るか?
アドビは来月、「フォトショップ」を含むクラウド型ソフトの利用料金を引き上げる予定。アナリストらによると、値上げ前の駆け込み需要で定額制契約が急増した。
記事によればアドビは来月にサブスクリプションの価格を引き上げるようです。今回の決算では値上げ前の駆け込み需要も含んでいたみたいですね。
公式のアナウンスによればプランごとに引き上げ価格が異なり、個人向けのCreative Cloud(単体アプリ)で月額1ドルの値上げで、チーム向けの全アプリプランだと月額10ドルの値上げのようです。
もちろん単に値上げするだけでなく、色々な新機能のリリースもあるわけですが、もしかしたらこの機会にプランの見直しや利用停止を検討するユーザーも出てくるのかもしれませんね。
サブスクリプション型ビジネスにとって平均ユーザー単価を引き上げることは重要ですので、今回の料金変更はアドビにとって良い結果になると予想しますが、この戦略が吉と出るかどうかは次の決算発表で確認したいと思います。
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