近々IPO予定のLyftがフォームS-1を提出しました。早速中身を確認してみましょう。
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- LyftがフォームS-1を提出
- Lyftのビジネス状況をチェック
- 筆頭株主は楽天ヨーロッパ
- LyftのプラットフォームにはAmazon Web Servicesを利用
- 地上の交通にフォーカスするLyft
LyftがフォームS-1を提出
LyftがIPOのためにフォームS-1をSECに提出しました。フォームS-1とは下記の通りIPO時に提出が必須のドキュメントのことですね。
米国において新規株式公開(IPO)を行うために米証券取引委員会(SEC)への提出が不義務付けられている書類のことで、財務諸表に加えて、会社のリスク要素など投資判断に必要な事項が記載され、適時開示システム「エドガーシステム」で公開される。
公開されたLyftのフォームS-1は下記リンクにあります。かなりのボリュームです。
Lyftのビジネス状況をチェック
LyftのフォームS-1からいくつかポイントを拾ってみましょう。
Lyftのミッション
Improve people’s lives with the world’s best transportation.
世界最高の交通手段で人々の生活を改善する
Lyftのミッション・ステートメントは上記の通りです。革新的な交通手段を核に、みなの生活をより良いものにしていくということですね。
Lyftの考える現代の課題
- 車の所有が増えすぎたことで、道路と駐車場の拡充により都市の緑が失われきた
- 自動車の所有は世帯の経済負担となっている。米国だけでも、消費者は個人輸送に年間1.2兆ドル以上を費やしている。一世帯当たりの交通手段の年間平均支出額は9,500ドルを超え、その大部分は自動車の所有権と運営費。
- その一方で、平均的には5%の車しか稼働しておらず、95%は駐車されたまま使われていない
- 消費者はより良い回避策を求めている。世界は車の所有から「サービスとしての輸送(Transportation-as-a-Service、TaaS)」へ移行し始めているとLyftは考えている。
Lyftの提供するソリューション
- ライドシェア・マーケットプレイス:ドライバーと乗客をつなぐプラットフォームを提供
- 自転車とスクーター:低コストで利便性の高い自転車とスクーターのライドシェア
- 公共交通機関との連携:いくつかの都市では交通機関のオプションをユーザに提供するために公共交通機関のデータと連携
- 自動運転車:自動運転車に関して数社と戦略的パートナーシップを締結。Aptiv社との連携によりラスベガスで自動運転車の商用運転を実現。
Lyftのビジネスモデルとしては、乗客とライドシェアリングのドライバーとをマッチングさせる以外にも、自転車や電動スクーター、公共機関、自動運転車といった交通手段の提供も持っています。
例えば電動スクーターの場合、下記のように自分の近くで利用可能な電動スクーターがマップ表示され、ユーザはスクーターのQRコードをアプリでスキャンするだけですぐ利用開始できます。
また公共機関の情報もアプリ上で確認できるようになりました。車、スクーターと組み合わせれば、目的地までシームレスに交通手段を確保できそうですね。
Lyftのドライバーと乗客の実態
<ドライバー>
- サービス開始以来、ドライバーの稼ぎは100億ドル以上
- 91%のドライバーが、週に20時間以下の運転時間
- 9%のドライバーが軍隊のベテラン
- 34%のドライバーが45歳以上
<乗客>
- 46%の乗客がLyftのおかげで自家用車の利用回数が減った
- 35%は自家用車を保有やリースしていない
- 52%がLyftを通勤に利用している
- 44%の乗り降りは低所得層エリア
2018年のLyft概況
- 乗客数:3,070万人
- ドライバー数:190万人
- フルタイム従業員:4,680人
- 運賃:81億ドル
- 売上高:22億ドル
Lyftの財務状況とキーメトリクス
Lyftの売上高等を見てみます。
やはりというか、まだまだ赤字の状況ですね。
2018年の売上高はおよそ21.6億ドル、営業利益は-9.8億ドル、純利益は-9.1億ドルでした。
運賃と売上高
乗客が払う運賃の総額と、そのうちLyftの取り分となる売上高の推移です。
2018年は運賃総額で80億ドルで、そのうち22.6億ドルをLyftが受け取った形ですね。
割合的には2018年は運賃の約27%を売上高として取っています。
アクティブ・ライダー数の推移
アクティブ・ライダーとはLyftのアプリを使って各四半期に一度でも乗車したことのある乗客のことです。要はLyftのアクティブ・ユーザですね。
2016年のQ1(1〜3月期)のアクティブ・ライダー数は350万人でしたが、毎期しっかりとライダー数が伸びており、2018年Q4で1,860万人にまで成長しました。
成長の傾向を見るとほぼ線形に伸びてますね。まだまだ今後も乗客数は増加していきそうです。
アクティブ・ライダーの単価
四半期の売上高をアクティブ・ライダー数で割った単価の推移です。
2016年Q2に単価がちょっと下がってますが、それ以降は単価が伸びてきてますね。
単価の伸びは乗客の利用回数の増加に加えてサービス利用料や手数料の改定によるものです。
2018年Q4ではアクティブ・ライダーあたり36ドルの単価となりました。今後もこの数字を伸ばしていけるかに注目ですね。
乗車回数の推移
Lyftのプラットフォームを介した乗車回数の推移です。
2018年Q4に1億7,840万回の乗車が発生しました。 2018年ではざっと6億2,000万回の乗車ですね。
Lyftとしては車以外にも自転車や電動スクーターといった交通手段も提供してますので、それらサービスを拡充することでさらに乗車回数は伸びる見込みです。
筆頭株主は楽天ヨーロッパ
現在のところ筆頭株主は楽天ヨーロッパで約3,140万株(13.05%)ほど保有しています。 楽天・三木谷氏の名前は役員一覧にも載ってますね。
その他の株主としてはゼネラル・モーターズやアルファベットがいました。どちらも自動運転車の関連でしょうかね。
LyftのライバルであるUberにはソフトバンクが多額の出資をしており、CNBCでもミッキーvsマサとして取り上げられてました。
LyftのプラットフォームにはAmazon Web Servicesを利用
Lyftのリスク要因の説明で、LyftのプラットフォームにはAmazon Web Services(AWS)をメインに利用している点が挙げられていました。
AWSとの契約により、2019年1月から2021年12月まで総額で最低3億ドルの支払いが発生するとのことです。AWSとしてもLyftは非常に大きな顧客の一つですね。
ちなみにUberもAWSの大口顧客で、AWSの成功事例としてよく名前を見ますね。ライドシェアリングのライバル同士が同じクラウドサービスを活用している状況なのは興味深いです。
地上の交通にフォーカスするLyft
Lyftのミッションはあらゆる交通手段をサービス化して人々の生活を改善していくことであり、ただのライドシェアリングの枠に収まらない可能性を感じさせます。
Uberのように空飛ぶタクシーを開発し始めたとしても不思議ではないですね。ただ今のところは下記インタビューのように地上での交通に焦点を絞っているようです。
ジマー氏:実際、空飛ぶ自動車はヘリコプターをブランディングしなおしただけのものだ。仮に安全性がかなり高まり、便利で楽しく低価格化も進めば、もちろんひとつの選択肢にはなる。だが今は地上の移動手段に専念している。
またUberはフードデリバリ・サービスに新たな活路を見出しているようですが、Lyftはあくまで交通サービスにフォーカスしているみたいですね。このあたりの戦略の違いが今後のUberとLyftを全く別の会社に変えていくのかもしれません。
次はUberの情報が提供されましたら両社を比較してみたいですね。

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