アマゾンが中国でのクラウド事業から撤退とのニュースが報じられました。一方でアマゾン自身は撤退するわけではないとコメントしているようです。
- アマゾンが中国でのクラウド事業から撤退との報道
- 中国ではクラウド事業をするには免許が必要
- グローバルでは圧倒的なアマゾンのクラウド事業も中国では存在感ゼロ
- ますます中国での存在感を高めるアリババ。このままグローバル市場へも順調に進出できるか
アマゾンが中国でのクラウド事業から撤退との報道
アマゾン・ドット・コムのクラウドコンピューティング・サービスは、中国市場でタオルを投げ入れた。アマゾンの中国のパートナーである北京光環新網科技は13日、「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の中国法人を最大20億元(約340億円)で買収すると明らかにした。
中国のデータセンター(DC)事業者の北京光環新網科技(光環新網=Sinnet)は11月13日、Amazon Web Servisces(AWS)の中国法人である亜馬遜通技術服務(北京)からクラウド事業の一部インフラ資産を最大20億元(約340億円)で買い取ると発表した。中国のインターネット規制に対応するための措置となる。
The U.S. firm appeared to have exited the country after The Wall Street Journaland Reuters reported that Beijing Sinnet, the partner that operates AWS China, had notified investors of its acquisition of the business for 2 billion yuan, or $300 million.
アマゾンは中国でも自社クラウドサービスであるAmazon Web Servicesを提供していますが、中国の法規制によりアマゾン単独でサービス展開することができないため、中国のパートナー企業である北京光環新網科技(Beijing Sinnet Technology)を通じてクラウド事業をしています。
今回の報道は、その北京光環新網科技がアマゾンの一部資産(おそらくサーバー等の物理資産)を約340億円で買い取ったという内容ですね。これがアマゾンの中国での事業そのものを買い取ったのか、文字通り資産のみを買い取ったのかがイマイチはっきりしませんが、中国でのアマゾンの事業展開が難しいことは伝わってきます。
中国ではクラウド事業をするには免許が必要
中国でクラウド(例としてIaaS)を提供する場合、クラウドの免許を保有している必要があります。
(中略)
免許のない企業はクラウドの提供ができず、免許を持つ第三者中国系パートナーと組んで提供する形になります。つまり、サービスを提供するにもパートナーとの協業が必要となり、パートナーとうまくやれないようだと新サービスのリリースに影響を与えます。
中国でクラウド事業をするには免許が必要なんですね。
おそらくアマゾンは中国でのクラウド事業免許を持っていないので、パートナー企業が必要となり北京光環新網科技と協業しているのでしょう。
こうした法規制への対応として、今回の報道にあるとおりアマゾンが自社資産をパートナーへ渡す必要が生じたと思われます。
今回の一部資産の購入について、光環新網は「中国の法律法規を遵守し、運営しているAWSの安全性とサービス品質をより向上するため」と説明。
<スポンサーリンク>
グローバルでは圧倒的なアマゾンのクラウド事業も中国では存在感ゼロ
クラウドのような新しいITは、サービスや機能追加にスピード感がなくなると競争優位性がなくなるので、こうした免許制度が外資系クラウドの中国シェア争いに影響を与えている可能性があります。
アマゾンのAWSは非常に頻繁に新機能をリリースすることで、グローバルのクラウド市場を圧倒的な存在感を示しています。調査会社ガートナーによれば2016年のグローバル市場でのAWSの市場シェアは44%にもなるようです。
しかし上記記事にもあるように、中国では法規制の影響でアマゾンも自社サービスの全てを展開することができておらず、クラウド事業は非常に苦戦しているようです。
中国クラウド市場シェア
中国でのクラウド事業は現在はアリババの一人勝ち状態で、中国市場でのシェアは40%ほどになるようです。第2位以下を全く寄せ付けない大きさですね。
グラフを見ての通り、ここにはアマゾンのAWSは登場しません。外の調査レポートによると中国市場でのAWSのシェアは3%ほどらしいので、「その他」の一部になっています。グローバルでは圧倒的なアマゾンのAWSも、中国では存在感がほぼゼロなんですね。
主要なクラウドサービスの売上高とマーケットシェア
2016年のクラウド事業のマーケットシェアを比べると、AWSが44.2%、アリババが3.0%となっており、グローバル市場と中国市場とでは立場が真逆ですね。
一方で成長率を比べるとアリババは126.5%という驚異的な成長率を示しており、AWSの3倍近くの成長率でした。今すぐにAWSを逆転することはないでしょうが、このペースがどこまで続くか興味深いです。
ますます中国での存在感を高めるアリババ。このままグローバル市場へも順調に進出できるか
先日のアリババの「独身の日」セールはすごかったですね。たった1日で2.8兆円もの売上を記録したそうです。
この記事でも目を引くのが、世界最大規模のショッピングイベントをきちんと処理できるインフラをアリババがしっかり持っている点です。
- 受注総件数は8億1200万件で23%増
- インフラストラクチャーを担当するAlibaba Cloudは、ピーク時には32万5000件の注文を同時に処理した
- Alipayは15億件の決済取引を処理し41%増
アリババのクラウド事業の実力はAWSと比べても勝負できるレベルなのではと思ってしまいます。中国という巨大市場で多種多様な最新ビジネスを下支えしているクラウドは伊達じゃないですね。
先のマーケットシェアを見る限りは、アリババはまだまだ中国以外の市場進出は上手く行っていないようですが、技術力もあり、おそらく価格競争でも勝負できるであろう彼らがどこまで世界進出できるかですね。
BABA : Summary for Alibaba Group Holding Limited A - Yahoo Finance
アリババの株価自体はずっと横ばいでしたが、2017年に高騰していますね。
以前に調べた、EPS成長率をもとにした株価妥当性ではアリババはかなり割安と判断できました。2018年の躍進を信じて投資するのも面白そうです。