KBCM Technology Groupが公開した非公開SaaS企業の調査レポートが面白いです。
KBCM Technology Groupの非公開SaaS企業調査レポート
KBCM Technology Groupが毎年公開しているSaaSレポート「SAAS Private Survey Results」の2018年版が公開されていました。
こういうレポートがある事自体はじめて知ったのですが、非常にボリュームのある読み応えのあるレポートですね。
SaaSのARR成長率や顧客獲得コストなど興味深いメトリクスの調査結果が盛りだくさんですが、ここではちょっと見方を変えてSaaS企業そのものではなく彼らが使っているクラウドサービスについて見てみたいと思います。
SaaS企業が使っているクラウドサービスは?
SaaSアプリケーションのデリバリ方法は?という質問への回答です。
思っていたとおりAmazon Web Services(AWS)が圧倒的な支持を集めていました。現状では回答の64%がAWSを使用中ですね。また3年後の利用状況でもAWSが67%とパイを増やすと見られていました。
次点でセルフマネージメント、つまり自社データセンタなどの所謂オンプレ環境を使っているのが全体の13%です。逆に言えば87%のSaaS企業がどこかのクラウドサービスを使っているということですね。
続いてGoogle Cloud、Microsoft Azureの順に続いていました(その他を除く)。世の中のクラウドサービスのシェアのレポートを見るとAWS→Azure→GoogleとかIBMとか、の順に並んでいたと思いますが、中小企業の多そうなSaaSではGoogleの方がちょっと人気高めですね。
あとは数%ですがSalesforceのApp Cloudが入っているのが面白いですね。Salesforceといえば営業向けのCRMのイメージが強いですが、開発プラットフォームのHerokuを買収したりForce.comを提供したりとアプリ開発者向けのサービスも揃ってますので、そのあたりがSaaS企業に受けているのかなと思いました。
IBMやアリババといったクラウドサービスはその他項目のどこかにいるんですかね。
2014年からのトレンドを見ると更に際立つAWSの強さ
同調査の2014年からのトレンド推移です。
2014年では自社運用が半数を占め、AWS利用企業は35%だけでした。またこの頃はGoogleもAzureもいませんね。
そこから毎年AWSはシェアを伸ばし続けているのが分かります。特に2017年から2018年にかけてが最も急速に利用企業を増やしていますね。その間、Azureの数字は変化なしで、Googleが2%から7%に増加でした。
ここ数年のトレンドを見ると、サービスを自社運用する企業は減少し続け、サービスの基盤にAWSを採用する企業が圧倒的に多いようです。Google、Azureはファーストチョイスとは言えないですね。
こうした非公開SaaS企業には起業して間もないスタートアップも少なくないでしょう。そうした企業がAWSを選んでサービス提供すると、事業が大きくなるにつれてAWSへの依存度も高まっていくのが普通に思います。
サービスの規模が大きくなるほど他のクラウドに引っ越すのは手間とお金がかかりますからね。
SaaSのサービス提供のために一番最初に選ばれるクラウドサービスの地位をしっかり築いているAWSは、その後のSaaSの成長とともにAWSの収益増加も期待でき、とても美味しいポジショニングをしているなと感心しました。SaaS業界でのGoogleやMicrosoftの苦戦はまだまだ続きそうですし、IBMは出る幕ないのではと思いますね。
改めてAmazonの強さを感じたレポートでした。本レポートのメインであるSaaS企業の実態調査も示唆に富んでいますので興味ありましたらぜひ一読してみてください。
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