ニュースで時折見かける「恐怖指数」こと「VIX」について調べてみました。
VIXとは
恐怖指数(きょうふしすう、英: volatility index, VIX)とは、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを元に算出、公表している指数。数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされる。通常は10から20の間で推移する。1993年より発表されるようになった。
上記説明の通り、VIXとはシカゴ・オプション取引所(CBOE)が公表している指数で、数値が高ければ投資家が相場の先行きに不安を感じているそうで、そこから転じて「恐怖指数」と呼ばれています。
例えば最近のニュースにもVIXに言及するものがありました。
投資家心理を測る指標とされ「恐怖指数」と呼ばれる米国株の変動性指数(VIX)が3日、前日比0.79ポイント(8.0%)低い9.14と過去最低を更新した。10月5日以来ほぼ1カ月ぶり。ハイテクなど主要企業の好決算が相次いでいる。3日に出た米雇用統計では失業率が低下した半面、物価を占う材料となる賃金は伸び悩んだ。好景気と低金利環境が両立する「適温相場」が続くとの見方から、先行きに楽観が広がった。
今現在はこのVIXが過去最低を記録しており、投資家が相場に対して非常に楽観的になっているといえます。先日の米国の四半期決算シーズンでも好決算を発表する企業がとても多かったですよね。
VIXを学ぶなら本家本元に学ぼう
先の説明の通りVIXはCBOEが公表している数値です。そのCBOEとS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによるVIX解説のホームページがありますので、こちらで詳細を見てみましょう。
【図解】VIX CBOEボラティリティ指数
http://www.japanese.spindices.com/vix-intro/
VIXとは何か?
CBOEボラティリティ指数は一般にVIXとして知られており、近い将来における米国株式市場の価格変動(現水準からの上昇及び下落)の推定範囲を予測します。
VIXは正確には近い将来の米国株式市場の価格変動を予測するもので、定義上は投資家の心理を測るものではないのですね。
具体的には、VIXはS&P 500®(SPX)の今後30日間のインプライド・ボラティリティを測定します。インプライド・ボラティリティが高い時には、VIXの水準は高くなり、価格変動の推定範囲は広くなります。インプライド・ボラティリティが低い時には、VIXの水準は低くなり、推定範囲は狭くなります。
ここで分かりにくい言葉がいくつかありますね。
- S&P 500・・・米国の代表的な500銘柄をもとに算出される株価指数。
- ボラティリティ・・・株価の変動の度合い。ボラティリティが大きいとは株価の変動が大きいことを示し、反対にボラティリティが小さい場合は株価変動が小さいことを示す。
- インプライド・ボラティリティ・・・将来のボラティリティを予想したもの。予想変動率とも。
つまりVIXとは、
S&P500の今後30日間の株価の変動率(インプライド・ボラティリティ)を計算したもの
になりますね。後ほど実際にVIXを使って向こう30日間のS&P500の値を予想してみます。
なぜS&P500の価格変動率の予想が「恐怖指数」と呼ばれるかというと、
株式市場が最も不安定な時にはVIXが最高水準に達するので、VIXは恐怖指数とも呼ばれています。VIXがセンチメント(特に不安)を測定するという意味では、その表現は的を射ていると言えます。
とのことでした。
確かに株式市場の株価が上下に大きく動くように変化してくると、将来の株価変動も大きくなると予想されることからVIXの値も大きくなりますね。そういったVIXの大きな相場では投資家の不安も高いでしょうから、「VIXが高い=不安が高い」を表現する意味で「恐怖指数」と呼ばれているようです。
VIXの数値はどの程度が適切?
先のサイトにVIXのインジケータがありましたのでそちらでVIXの適度を確認してみましょう。VIXの値に応じて大きく5段階あるようです。
VIXが15未満
VIXが15未満のときは、市場全体が楽観ムードです。先程の日経のニュースでは現在のVIXが9.14とありましたので、今はかなり楽観ムードですね。
VIXが15〜20程度
VIXが15〜20程度の範囲にあるときは株式市場は正常状態とのことです。
VIXが20〜25程度
VIXが20〜25程度の範囲にあるときは、市場全体で懸念が高まっています。目安としてVIXが20を超えると注意し始めたほうが良さそうですね。
VIXが25〜30程度
VIXが25〜30程度の範囲にあるときは、株式市場に混乱が生じていることを示します。
VIXが30以上
VIXが30以上では、株式市場に極端な混乱が生じていることを示します。ここまで来ると社会経済も大きな混乱が生じていることでしょう。
過去の金融危機のときのVIXは?
VIXが20を超えると懸念が出始め、25を超えると市場に混乱が生じるということですが、過去の金融危機のときはVIXはどの程度の値を示していたのでしょうか。
サイトにありましたVIXとS&P500との比較チャートです。白がVIXで緑がS&P500を示しています。
まずチャートを見て分かることは、VIXとS&Pは通常は反対方向に動くということです。つまり両者は負の相関関係にあるということですね。あくまで相関であり因果は説明されていない点に注意です。
サブプライムローン問題に端を発した2007年からの金融危機のときは、白のVIXがかなりの勢いで急上昇していました。このときのVIXは80.86の史上最高値をつけたそうです。VIXが30を超えれば市場に大きな混乱が生じているそうですから、VIXが80を超えたこの時代の混乱ぶりは想像し難いレベルですね。
VIXの値からS&P500の今後30日間の値の推移を予想する
VIXはS&P500の今後30日間の価格変動率を予想するものですから、実際に今のS&P500の値を使って予想を計算してみましょう。
VIXの値からS&P500の予想を算出する方法は次の4ステップになります。
- VIXをパーセンテージに変換。VIXの値に%をつければOK。
- そのパーセンテージを√12(12の平方根)で割る。
- 現在のS&P500の価格に上記2のパーセンテージをかける。
- 現在のS&P500の価格から上記3の値を足し引きし、上限と下限を求める。
現在のS&P500は2587.84ドルで、VIXは9.14です。この値からS&P500の将来予想を算出してみましょう。
- パーセンテージに変換・・・9.14→9.14%
- √12で割る・・・9.14%÷√12=2.64%
- S&P500にかける・・・2587.84×2.64%=68.28
- S&P500から足し引き・・・上限:2587.84+68.28=2656.12、下限:2587.84-68.28=2519.56
VIXを用いた計算により、今後30日間のS&P500の価格は2519.56〜2656.12ドルの範囲で推移すると予想されます。±2.64%の価格変動ということであまり大きな変動はないということですね。あくまで予想ですから外れることもありますのでその点はご注意ください。
今現在の市場は過去最低のVIXが示すように非常に楽観的です。ただ先程の日経の記事にありましたが、『下がりすぎると「投資家が相場の先行きに慢心している証拠」との指摘もある。』という側面もあります。年末年始にかけては株価が動きやすいですから、今の好調な相場に慢心しないでしっかり準備しておきたいところですね。