毎月頭に発表されるISM製造業景況指数が久方ぶりに大幅な下落を示しました。米経済の成長減速が心配ですが、そもそもISM製造業景況指数って何でしょう?
12月のISM製造業景況指数は前月から大幅下落
米国供給管理協会(ISM)が発表した12月の製造業総合景況指数は54.1で、11月の59.3から5.2ポイント下落しました。直近では2008年10月以来の大幅な低下のようです。
同指数は50を基準に判断しており、50を超えれば製造業は伸びており、50を下回れば製造業の業績悪化を示唆しています。その観点では今回は54.1でしたのでまだ50は下回っていません。
一方、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は57.5でしたので、予想よりも米経済の成長が鈍化し始めているとも捉えられそうです。
今回の発表を受けてS&P500やNYダウといった指数も下落してきました。
そもそもISM製造業景況指数とは?
今回発表されたISM製造業景況指数とはどういう指数でしょうか。下記の参考文献を元に解説します。
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ISM製造業景況指数は、米国供給管理協会(ISM)が全米の主要製造業およそ400社の購買担当役員にアンケート調査を実施し、その結果をもとに製造業の景況感を表したものです。
製造業の購買担当役員は製造のための原材料供給の責任を負っており、何をどれだけ仕入れるか常に考えています。彼らは自社の状況に応じて供給を決定するため、その意見を収集することで業界の状況を高い信頼度で把握できるわけですね。
ISMのアンケート項目は、新規受注/生産/雇用/入荷遅延比率/在庫/仕入価格/受注残/輸入/輸出の9項目になります。このうち、新規受注/生産/雇用/入荷遅延比率/在庫の5項目はPMI(Purchasing Managers' Index)と呼ばれ、ISM製造業景況指数のメイン指数となります。先程の発表で54.1と示されていたのがこれにあたります。
このPMIが50を超えていれば製造業は順調に伸びており、反対に50を下回れば製造業の業績悪化と考えられるわけです。
PMIおよび各指数を確認
PMIとその他の指数の値がどうだったかは、実際にISMのWebサイトで確認できます。
【ISMの製造業景況指数ページ】
https://www.instituteforsupplymanagement.org/ISMReport/MfgROB.cfm
12月の各指数の表を抜粋すると下記の通りでした。
PMIおよび各指数を確認すると、『新規受注』の指数が-11と最も下げ幅が大きかったですね。
先の参考文献によると、景気の先行きを知る上ではPMIの他にこの『新規受注』および『雇用』の指数が重要とのことです。『雇用』は前月比で-2.2ポイントの下落です。
『新規受注』はまだ50を上回っていますが、前月比で大幅に下落している点、また51.1と50の基準に非常に近づいてきた点で、米経済の製造業の先行きに不安が見えてきているのではと思います。
『雇用』指数は56.2ですがこちらも前月比で少し下がってきました。製造業の雇用数も徐々に低下し始めているのでしょうか。
PMI、新規受注、雇用の3指数が同時に上昇しているときは製造業全体の景気が良くなっていることを示唆しますが、今回は3つとも下落しています。ISM製造業景況指数は先行指標であるため、2019年はこれから製造業の景気悪化が見え始めると思われます。
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PMI、新規受注、雇用の3指標の推移
参考までに2018年の3指標の推移をチャートで。
PMI
新規受注
雇用
どうでしょうか?PMIと新規受注は緩やかに下落のトレンドを描いているようにも見えます。雇用はややフラットな推移でしょうか。
今回の12月の指数発表で米経済の景気後退の兆候が示唆されました。これら指標に上昇トレンドが見えてくるまでは米経済の先行きは暗くなりそうですね。。今後もその他の景気動向指標が発表されるでしょうから、それらを注意深くウォッチしておきましょう。
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