リセッションの兆候を知るために様々な経済指標を確認しておきましょう。今回は不完全雇用についてです。
参考文献
- 作者: サイモン・コンスタブル,ロバート・E・ライト,上野泰也,高橋璃子
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2012/02/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ISM製造業景況指数でも使いました参考文献です。50種類の経済指標が分かりやすく解説されていてオススメです。
不完全雇用とは
不完全雇用はフルタイムの求人が足りないためにパートタイムで働いている状態を指す言葉です。これは自ら進んでパートタイムを選択している訳ではなく、フルタイムで働く意志はあるのに、様々な理由から短時間労働をやむなくされている状況です。
企業がリストラを行うときはその前段階として短時間しか働かない労働者の増加が見られます。人材の育成にはコストがかかるため、企業も簡単に人材を手放したくはないからです。もし解雇してしまうと、景気回復したときには人材採用と育成で大きなコストがかかりますからね。
景気の低迷が長期化してくると企業はようやく従業員の解雇に踏み切ります。そのため、まず短時間労働者が増加し、しばらくたってから解雇が始まって失業率の増加につながります。そのため不完全雇用は景気後退を予測する上で重要な先行指標となります。
不完全雇用は別名U6失業率とも
米国労働省の発表する米国雇用統計の失業率は下記のU1からU6まであります。不完全雇用(率)はこの失業率の中では『U6失業率』に相当します。
- U-1:労働力人口に占める、15週間以上の失業者の割合
- U-2:労働力人口に占める、解雇、及び一時契約期間完了者の割合
- U-3:労働力人口に占める、失業者の割合(=公式の失業率)
- U-4:U-3にディスカレッジド・ワーカー(職探しを諦めた人)を加算
- U-5:U-4に縁辺労働者(家事や育児との兼業などで働けない人等)を加算
- U-6:U-5にフルタイム求職にも関わらずやむを得ずパートタイム労働の人を加算
過去のリセッション期間と不完全雇用率との関係
不完全雇用率とリセッション期間が過去にはどういう関係にあったのか、実際のデータで確認してみましょう。
まず不完全雇用率(と失業率)は米国雇用統計のサイトでダウンロードできます。
<不完全雇用率>
<失業率>
リセッション期間については全米経済研究所(NBER)のサイトで確認できます。
<リセッション期間>
そもそも米国のリセッションはどう判定されているかというと、このNBER内に設立されている景気循環判定委員会が判定して決めています。この判定には数字的な明確な基準があるわけではなく、下記3点を判断材料にしているそうです。
- 「経済活動全般」にわたって「相当な下降局面」にあること
- 数ヵ月以上の持続的なものであること
- 実質GDP、鉱工業生産、雇用、実質個人所得(移転所得除く)、製造業・卸売・小売の実質販売高、等で明示的な下降を見せていること
そのNBERによるリセッション判定のうち、2000年以降のリセッションは下記2回ありました。
- 2000年3月〜200年11月:ドットコム・バブル後の景気後退
- 2007年12月〜2009年6月:金融危機後の景気後退
この2つの期間前後の不完全雇用率と失業率をチャートにプロットしてみましょう。
最初のドットコム・バブル後の景気後退については、その直前の2000年12月〜2001年1月にかけて両指標が上昇し始めているようです。
景気後退に入ってからは不完全雇用率の方が角度が急ですね。
次の金融危機後の景気後退ではリセッションの入り口付近(2007年11月〜2008年1月)に不完全雇用率の急上昇が見て取れます。
同じ期間の失業率の方はまだそこまで上昇が見えないですね。このリセッションでは不完全雇用率が先行指標として働いていたのかなと思います。
失業率だけでなく不完全雇用率もチェックしておくことで、リセッションの兆候をより高い確度で把握できそうですね。
ここ数ヶ月の不完全雇用率は2018年8月を底に若干上昇しました。8月で7.4%でしたが12月は7.6%でした。まだまだ急上昇とは言えない水準ですかね。
また11月の不完全雇用率も7.6%でしたので、今のところは2ヶ月連続で同じ数値となっています。これが上がり始めたときは要注意ですね。
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景気後退の兆候が見え始めたときの投資
景気後退の兆候が見え始めたら基本的にはディフェンシブ銘柄へ投資することで資産の値下がりを抑えることが大事ですよね。
冒頭で紹介した参考文献でも不完全雇用が増え始めたら「生活必需品への投資で資産を守る」ことを推奨しています。
ただ生活必需品への投資については気になる記事も目にしました。
生活必需品銘柄がディフェンシブでなかったら、一体なにがディフェンシブ銘柄なんでしょうか。。
本記事の主旨としては、
- Eコマースの台頭や小売のプライベートブランド商品などにより生活必需品の製造業は価格圧力が増している
- 消費者の健康志向など嗜好の変化により加工食品企業は不振に苦しんでいる
- 経済構造の変化により、ある時代のディフェンシブが次の時代にはディフェンシブではなくなっているかもしれない
といった内容です。特に最後の「今の時代にとってのディフェンシブ銘柄」は何にあたるのかをしっかり考える必要がありそうです。
個人的にはタバコ銘柄もこの例に当たるのではと思っています。タバコ銘柄は生活必需品セクターに属する高配当銘柄ですが、ここ最近では高配当の魅力よりもビジネス環境の変化と株価下落に対する懸念を強く感じています。そのあたりの話は前に記事に書きました。
不完全雇用率などの経済指標を確認してリセッションの兆候を掴むとともに、いざリセションを迎えたときのための投資銘柄の選択もしっかり準備しておきたいですね。
- 作者: サイモン・コンスタブル,ロバート・E・ライト,上野泰也,高橋璃子
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