米国のペット産業についての記事を読みました。個人的にペットは飼っていないので実感がなかったですが、ペット産業は思っていた以上に巨大で安定した市場みたいです。
安定して成長を続けるペット産業
記事によれば、米国のペット産業は2017年に700億ドルに達すると予測されています。現在の日本円ですと8兆円近くの市場規模ですね。想像以上に巨大な市場でした。
米国ペット市場規模の推移
Pet Industry Market Size & Ownership Statistics
American Pet Products Associationの統計をグラフにしてみました。毎年着実に市場規模が成長していますね。2016年は特に大きく成長した年だったようです。不況知らずの成長ぶりです。
市場の内訳は下記のとおりです。数値は上記統計の2016年の実績値です。こうしてみると、ペットの購入費自体は市場の3%程度で、その後のペットの食事や健康のケアがほぼ全てですね。
- ペットフード・・・・282.3億ドル
- 日用品・医療品・・・149.3億ドル
- 獣医診察・・・・・・166.2億ドル
- ペット購入・・・・・21億ドル
- 関連サービス・・・・57.6億ドル
ペットは最早ペットではなく立派な家族の一員
昔からよく聞く言葉ですが、現在ではより一層ペットを家族として捉える傾向が強まっているようです。先程の記事によれば米国では44%の世帯が犬を、35%の世帯が猫を飼っているそうで、記事で紹介されているペットオーナーは年間で数千ドルをペットに費やすと述べています。
彼らが利用するのはBarkBoxのような定額購読サービスで、月に数十ドルを支払うと毎月ペット用のおもちゃやペットフードが届くサービスです。BarkBoxを手がけるBarkは愛犬家に向けたサービスに特化していますが、それもそのはず、BarkのCEO自身が大の愛犬家なんですね。
Dog Toys, Treats & Gifts Every Month | BarkBox
ベンチャーキャピタルを運営していた Meeker氏は、自身が飼っている大型犬用の製品を探しますが、自分が気に行った製品はサイズが小さかったり、サイズは丁度良くてもデザインや品質がイマイチなものしかありませんでした。数日かけて何軒もの店に足を運んだ Meeker氏でしたが、満足するものには出会えませんでした。
犬用の製品は、種類やサイズが少ないと感じた Meeker氏は、全ての愛犬家達が欲しくなるような幅広い製品を提供するスタートアップを立ち上げようと考えます。
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店舗ビジネスからEコーマスビジネスへ
BarkBoxのように高品質なサービスをEコマースで提供するスタイルは今の世代にフィットしているのではないかと思います。わざわざ店舗に足を運ばなくとも、店舗よりも質の高いサービスを受けられるならば、そちらを選ぶ人が増えるのが自然ですね。
全米で1500店舗を有するPetSmartが急成長企業のChewy(チューイ)を買収したのもEコマースに重点を置き始めたからのように思います。Chewyはこれまた愛犬家の起業家により始められたペット用品のEコマースで、その徹底した顧客サービスが話題となっていました。
チューイの顧客サービス戦略は大胆だ。スタッフは24時間体制で問い合わせに対応。ペットが商品を気に入らなければチューイは返金に応じ、使いかけの商品はアニマルシェルターに寄贈するよう勧める。愛猫が亡くなったから自動発注をやめるという顧客には、お悔やみの花を贈る。昨年は手書きのクリスマスカードを200万枚送り、切手代だけで94万ドルかかった。
大切な家族の一員に非常に手厚いサービスを提供してくれるChewyはただの通販サイトの枠を超えていますね。サービスが手厚すぎて赤字続きみたいですけど、長い目で見れば愛犬家・愛猫家たちとの関係は非常に強固なものになりそうです。
ちなみにPetSmartによるChewyの買収額は、ウォルマートによるJet.comの買収額よりも多かったそうです。どちらも対AmazonのためにEコーマス企業を買収したのでしょうが、改めてペット産業の大きさと重要性には驚かされます。
ペット産業は新たな生活必需品セクターの一員になる?
家庭用品やヘルスケア用品などを扱う生活必需品セクターは景気変動に強いですが、ペットという家族に対しても生活必需品は必要ですし、市場の伸び具合を見ているとペット産業も新たな生活必需品セクターの一員になってもおかしくないのではと感じますね。
またペット産業の事例をみていると、国民の生活の中で重要性を増すであろう領域は不況に強く安定成長するものだと改めて思いました。
ペット用品企業が実店舗とEコーマスの融合に関して関心を示しているのも、ちょうどAmazonやウォルマートといった小売業がそうした方向を目指しているのにも重なり、事例研究として興味深いです。ペットをケアするIoT等の周辺ビジネスも出始めており、ペット産業の成長はしばらくは止まらない気がしますね。ペット産業への投資、面白いかもしれません。