一つ前の記事の続きとなります。
今回はフェイスブック、シスコ、IBMについて見ていきます。
経営状況を見てみる
フェイスブック (FB)
年 | 純利益 | 営業CF | 売上高 | 営業CFマージン |
2014 | $2,925 | $7,326 | $12,466 | 58.8% |
2015 | $3,669 | $10,320 | $17,928 | 57.6% |
2016 | $10,188 | $16,108 | $27,638 | 58.3% |
(単位:百万ドル)
営業CFは年々増加、営業CFマージは60%近い値と、その収益構造は驚きの一言です。
先日に発表された第1四半期の決算もその好調ぶりが伺えます。
フェイスブックの売上の98%ほどは広告です。フェイスブックのフィードに流れてくる広告を目にする機会は増えているように感じます。
現在、フェイスブック広告の主な利用主は中小企業であり、その4分の3は米国外の企業(特に新興国)のようです。昨今のスマホの進化により動画広告も比較的安価に制作できるようになったことも追い風です。
フェイスブック利用者も増加の一途をたどっており、広告主としても広告1本でリーチできる数が増えることは嬉しいでしょう。ユーザーのプロファイルや行動履歴など、オンライン広告ならではのデータを活用できる点も魅力です。
一方で、広告配信には限界がある点をフェイスブックは認めており、今後はいままでのような急激な広告収入の伸びは期待しない方がよいようです。確かに個人のニュースフィードが企業広告で埋まってしまうような事態は避けてほしいところです。
フェイスブックは企業買収も積極的です。最近ではVRヘッドセットを開発するOculus VR、世界最大のメッセンジャーアプリWhatsApp、ドローン製作会社Ascentaなど、新しいビジネスを期待させる買収のニュースを目にします。広告収入の伸びが鈍化すると予想されるなかで、新たな収益源につながるビジネスが発表される日も遠くないかもしれません。
シスコシステムズ (CSCO)
年 | 純利益 | 営業CF | 売上高 | 営業CFマージン |
2014 | $7,853 | $12,332 | $47,142 | 26.2% |
2015 | $8,981 | $12,552 | $49,161 | 25.5% |
2016 | $10,739 | $13,570 | $49,247 | 27.6% |
(単位:百万ドル)
営業CFは毎年着実に増えています。営業CFマージンも25%以上と非常に優れた経営状況です。
もともとはスタンフォード大学に勤務していた夫婦によって設立された今で言うスタートアップ企業だったシスコシステムズですが、その成長速度には目をみはるものがあります。ITバブル期の2000年には時価総額が世界一になっています。
主力はルーターやスイッチといったネットワーク機器ですが、他分野でのM&Aにも非常に積極的で、ネットワークを中心に添えつつその周辺技術も首尾よく固めている印象です。過去に買収した企業の業種は、映像配信サービスやWeb会議、セキュリティ、無線LANなど、その数は百数十社におよびます。
List of acquisitions by Cisco Systems - Wikipedia
IoT、インターネット、スマホなど、ネットワークの重要性が増すことは確実ですので、シスコシステムズの将来性には大いに期待しています。また東京五輪のオフィシャルパートナーになったということですので、2020年の五輪会場のネットワーク関連でシスコの名前を見ることになるかもしれません。
IBM (IBM)
年 | 純利益 | 営業CF | 売上高 | 営業CFマージン |
2014 | $12,022 | $16,868 | $92,793 | 18.2% |
2015 | $13,190 | $17,008 | $81,741 | 20.8% |
2016 | $11,872 | $16,958 | $79,919 | 21.2% |
(単位:百万ドル)
営業CFは2016年に微減ですが、営業CFマージンは20%台で増加しています。
このところあまり良いニュースを聞かないIBMですが、やはり底力は秘めていそうです。メインフレームを主体としたハードウェアベンダーから、徐々にサービスを商品としたベンダーに変貌を遂げ、今では人工知能サービスであるWatsonを主力としたクラウドサービスベンダーに変わろうとしている印象です。
IBMといえば著名投資家のウォーレン・バフェット氏のお気に入り銘柄として有名ですが、先日に発表されたIBM株式売却のニュースは様々なメディアやブログを賑やかしました。
先日に発表された20四半期連続の減収も株価下落の要因となっていました。減収の要因は複数でしょうが、下記記事ではクラウド事業とハードウェア事業のカニバライゼーション(共食い)が指摘されています。「所有から利用へ」を推進するクラウド事業は、モノを売るビジネスのハードウェア事業と真っ向からぶつかってしまいます。
おそらく、IBMにとってはクラウド事業への変革期なのだろうと思われます。彼らのクラウド事業自体は、AmazonのAWSを(わずかですが)超える年間成長率で伸びています。彼らの構造改革にはまだ時間がかかりそうですが、何度も変革を実現してきた企業ですので、その動向に注視したいと思います。