ウォルマートがFY2019の第1四半期決算を発表しました。店舗の客足が悪く、既存店舗売上は予想に届きませんでした。米国店舗は利益構造の改善も必要そうです。
関連記事:その他の小売業の決算
ウォルマート(WMT)の四半期決算
- EPS:1.14ドル(予想:1.12ドル)
- 売上高:1227億ドル(予想:1205億ドル)
- 米国既存店舗売上:+2.1%(予想:+2.3%)
ウォルマートのFY2019第1四半期(2〜4月期)は、EPSと売上高がコンセンサス予想を上回るものの、米国の既存店舗売上高の成長率が予想を下回りました。
米国の店舗売上高が伸びなかった要因としては、「例年にない寒さと雨が多かった4月の天候」により店舗の客足が少なかったことが挙げられます。
先日のホーム・デポの決算でも長引く冬日の影響で季節商品の売れ行きが悪かったですし、小売業全体で気候の影響が大きくでているのかもしれないですね。
一方、米国のネット通販の売上高は前年同期比で+33%の増加となり、前期FY16Q4の+23%から大きく伸びました。
チャートで見るウォルマートの四半期決算
売上高、利益の比較(単位:百万ドル)
ウォルマートのFY2019年Q1の売上高は+4.4%の成長で約1,227億ドルでした。やはり売上高は桁違いに大きいですね。
一方で営業利益、純利益ともにマイナスとなり、特に純利益は-30%近く下げていました。
粗利益率、営業利益率も微減しており、売上高の伸び以上に費用がかさんでいるのでしょうか。
発表によれば主に価格競争のための投資と輸送費の増加が粗利益低下に影響したとのことです。
四半期ごとの売上高推移(単位:百万ドル)
ウォルマートの四半期売上高の推移をみると、ここ3四半期ほどは+4%台と以前より大きく売上高を伸ばしています。売上高自体は順調に伸びているようですね。
粗利益率の推移
同じく四半期ごとの粗利益率を見てみましょう。
数字的にはほぼ横ばいですが、前年同期比で比べると僅かずつですがじわじわと利益率が下がっています。
やはり少しずつコストが増加しているのかなと思います。
ウォルマート米国店舗は伸び悩み?コスト改善も課題に
ウォルマート米国店舗について、売上高の成長率と来店者数の成長率を四半期ごとに見てみます。
先程触れたとおり、気候の影響で4月は客足が悪かったようで、数字的にもFY19Q1は売上高・来店者数ともに成長率が前期と比べて下がりました。特に来店者数は大きく下げてますね。
売上高の成長率は下降トレンドのように見えるのが心配です。来店者数も今期は回復すると良いのですが。
営業利益の推移
既存店舗の営業利益と成長率の推移です。
前年同期比で成長率が徐々にマイナスに推移してきています。今回のFY19Q1決算では-3.1%と営業利益はマイナス成長となりました。
粗利益率も23ベーシスポイント(0.23%)下げたようで、価格競争、サードパーティ輸送コスト、燃料費といった費用が圧迫したそうです。
米国店舗はこういったコスト改善による利益率の改善が課題に思いますね。
コスト改善については、ライバルのクローガーは英国Ocadoと提携を発表しました。
Ocadoは「Ocado Smart Platform」という完全自動化された配送センター技術を持っており、クローガーも米国で同社技術を導入していきます。
オカドが独自に開発したオンライン注文、決済、配送管理までを自動的におこなう「オカド・スマート・プラットフォーム」を導入する。すでに米国内3カ所で完全自動化倉庫の建設に着手しており、今後3年間で20数カ所まで増やす計画だ。
こうしたクローガーの動向はコスト削減に加えてネット販売の強化に本腰を入れ始めたサインだと思いますね。ウォルマートだけでなくAmazonにもプレッシャーを与えるニュースではないでしょうか。
Ocado Smart Platformについてはこちらの動画が一目瞭然です。
米国のネット通販は回復の兆し
米国の店舗の方は伸び悩んでいましたが、ネット通販の方は良い結果でした。
FY19Q1は+33%の伸びで前期から成長率が上向いてきましたね。
上のチャートは四半期ごとの米国のネット通販売上の伸び率です。FY17Q1〜Q3はグローバルでのネット通販の伸び率です。
FY18Q1(昨年2〜4月期)の+63%の成長率から少しずつ下げてましたが、今回の成長率上向きが回復の兆しになればいいですね。
ウォルマートはFY19のネット通販成長率を+40%と見込んでいますので、まだその成長率に届いていませんがこのまま伸びていけば達成可能ではと思います。
<スポンサーリンク>
Flipkart買収でインドの巨大市場開拓を狙う
ウォルマートは5月にインド最大のネット通販会社Flipkartの買収を発表しました。株式の77%を160億ドル(約1兆7500億円)で取得します。
今回の買収によりウォルマートのFY2019はEPSが0.25〜0.35ドルほど押し下げられる見込みです。
FlipkartとインドのEC市場
「インドのAmazon」とも呼ばれるFlipkartについて概要を紹介します。
Flipkartは元Amazonの社員2名が2007年に立ち上げました。初期Amazonと同じく最初は書籍のネット通販を手掛けたようで、最初の年は20冊しか売れず、それをバイクとスクーターで配送していたそうです。
それが今では登録ユーザ数が1億ユーザに達し、Flipkartのサイトも1日あたり1000万PVになるまでに成長しました。
商品カテゴリは80以上、登録商品は8,000万個にもなるようで、この10年で急速に成長したことが伺えますね。
India Brand Equity Foundation(IBEF)の調査によれば、インドのEC市場は2017年は385億ドルでした。それが2020年に640億ドル、2026年に2,000億ドルにも成長すると予想されています。インド市場の成長性の高さには驚きです。
Amazonにとっても魅力なインド市場
そんな高成長市場をAmazonが放っておくわけはなく、FlipkartについてもAmazonは買収を狙っていたのではと言われています。今回はウォルマートに軍配が上がりましたね。
Amazonにとってインド市場がどれだけインパクトを持つかは、先月に公開されたジェフ・ベゾスから投資家へのレターに記載された文章に表れています。
- Amazon.inはインドで最も急速に成長しているマーケットプレイスでありデスクトップとモバイルの両方で最もアクセスされるサイトとなっている
- Amazon.inのモバイルアプリは2017年に最もダウンロードされたアプリとなった
- インドのAmazon Primeの会員数はその初年度に過去の他のどの地域よりも多くの会員を得た
- Prime selectionはサードパーティの地元セラーからの4,000万以上のローカル商品を扱う
- Prime videoはインド・オリジナルの動画コンテンツに大きく投資中である
AmazonとしてもインドのEC市場は巨大かつ急成長な市場であり、積極的に大きな投資をしていますね。残念ながらFlipkartの獲得はなりませんでしたが引き続きAmazon.inをベースにインドでも存在感を発揮するでしょう。
米国市場でイマイチ元気がないウォルマートですが、今回のFlipkart買収でインド市場開拓の足がかりができましたね。
2026年には20兆円以上にもなると言われるインドのEC市場をめぐり、インドでもAmazonと暑い火花を散らす戦いはまだまだ続きそうです。
改訂版 インドのことがマンガで3時間でわかる本 (アスカビジネス)
- 作者: 関口真理,中島岳志,辻田祐子,三輪博樹,繁田奈歩
- 出版社/メーカー: 明日香出版社
- 発売日: 2015/02/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る