現在、エネルギー銘柄としてエクソン・モービルを保有しています。最近は原油価格の下落でエネルギー銘柄全般の株価も影響を受けています。他にも影響を与える要因として石油があと何年使えるのかという点があるかと思いますが、そもそもその石油の「埋蔵量」はどうやって決まっているのでしょうか?
参考文献:石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?
石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書)
- 作者: 岩瀬昇
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/09/19
- メディア: 単行本
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タイトルの通り、石油の埋蔵量のカラクリやシェール・ガスなどについて、三井物産のエネルギー部門に40年以上勤めていた著者が分かりやすく解説してくれる書籍です。
目次
- 第1章 日本の輸入ガスはなぜ高いか?
- 第2章 進化するシェール革命
- 第3章 「埋蔵量」のナゾ
- 第4章 戦略物資から商品へ
- 第5章 もう一度エネルギー問題を考える
- 第6章 日本のエネルギー政策
「埋蔵量」と「資源量」
ニュースなどで石油の埋蔵量に関する記述を見かけると字面の通りその量の石油が埋まっているのだなと思いますが、実は正しくは「技術的に回収可能な資源量」を指すそうです。
例えば下記のニュースで「石油の埋蔵量は米国が2640億バレル」と報道されていますが、これも正確には上記の定義になるのでしょう。
「埋蔵量」と「資源量」の違いはどこにあるのか
「資源量」とは地中に存在するすべての炭化水素量のことで、さらに不確実性の高い順に「未発見資源量」「推定資源量」「原始資源量」とレベル分けされます。米国のEIA(アメリカエネルギー情報局)が発表する数字は、この「原始資源量」の中でもさらに「技術的に回収可能な資源量」の値になります。
一方の「埋蔵量」は、この「技術的に回収可能な資源量」のうち、通常の方法で経済的な採掘が可能なものを言います。さらに回収可能性のレベルに応じて、「確認埋蔵量」(回収確率90%以上)、「推定埋蔵量」(回収確率50%以上)、「予想埋蔵量」(回収確率10%以上)の3段階に分かれます。
一般に「埋蔵量」と言うときは「確認埋蔵量」を指すようで、ほぼ全量を経済性をもって生産することが可能と考えます。経済性をもって生産可能とは、著者の比喩を借りると、
掘って生産して元が取れるということです。技術的には海水から金を採取することも可能だと言われています。でも膨大な海水からほんのちょっとしか取れない。コストを考えたら、誰もそんな馬鹿なことはやらないわけです。つまり、採掘する価値を誰も見出さない資源は「資源量」とは言えるけど「埋蔵量」とは言えないのです。
とのことで、「埋蔵量」は字面の通りにただ埋まっている量を指すわけではなく、それを掘って生産して元が取れることが必要なんですね。
ここでまでの「資源量」と「埋蔵量」の関係を図示すると下記のイメージでしょうか。
成長する「埋蔵量」
先の説明から分かることは、埋蔵量は固定のものではなく、資源が経済的に回収可能となることで資源量から予想埋蔵量や推定埋蔵量、最終的に確認埋蔵量として認識されていくということです。
例えば昨今のシェール・ガス革命についても、古くから資源があることは分かっていましたが技術的・経済的に回収困難だったため埋蔵量としてはカウントされませんでした。しかし1998年に「シェール革命の父」と呼ばれたジョージ・ミッチェルにより水圧破砕法が確立され、技術的・経済的にシェールガスを回収可能となり、晴れて「埋蔵量」入りを果たしました。
このように技術革新や価格上昇にともなって、技術的・経済的な回収のめどが立てば「埋蔵量」は成長することになります。1970年台にはあと30年で枯渇すると言われた石油がその後にあと50年は大丈夫と年数が増えた背景にはこういったロジックがあります。
過去から今に至るまでの埋蔵量と可採年数の推移は下記のようになります。データは以前に紹介した石油連盟の資料からの抜粋です。確認埋蔵量と可採年数が徐々に増加していることが見て取れますね。
石油に関する参考記事
シェール革命についても詳しく解説
本書では他にシェール革命についても詳しく解説しています。なぜ米国でシェール革命が起きたのか、次の革命が起きるとしたらどの国か、といったトピックを分かりやすく学べました。
また石油ビジネスの成立条件やこれからのエネルギー問題への見方についても興味深いトピックが多かったです。今後のエネルギー銘柄への投資を考える際に、それら観点を考慮して検討したいと思います。
石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門 (文春新書)
- 作者: 岩瀬昇
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/09/19
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