ウォルマートの四半期決算と2017年通期の決算が発表されました。Amazonへの対抗馬として期待の大きかったウォルマートですが、決算内容では特にEコマースの成長鈍化が失望を誘い、ウォルマートの株価の大幅な下落を招く結果となりました。
ウォルマート(WMT)の四半期決算
Walmart misses by $0.04, beats on revenue - Walmart Inc. (NYSE:WMT) | Seeking Alpha
- EPS:1.33ドル(予想を0.04ドル下回る)
- 売上高:1363億ドル(予想を13.9億ドル上回る)
- ガイダンス:年間EPS 4.75〜5.00ドル(予想:5.13ドル)
ウォルマートの第4四半期決算は売上高こそコンセンサス予想を上回ったものの、EPSとガイダンスが予想を下回る不調な内容でした。
特に注目を集めたのがネット販売のEコマース事業の不調で、前回決算の第3四半期決算ではEコマースが前年同期比で50%成長を見せたものの、今回の第4四半期決算では半分以下の23%成長でした。
Eコマース事業でAmazonに対抗すべく大きな成長を期待していた反動もあり、ウォルマートの株価は10%以上の下落を示す結果となりました。
チャートで見るウォルマートの決算内容
売上高(単位:10億ドル)
第4四半期と年間通期に対する会計年度2017年と2018年の比較です。会計年度2018年がカレンダーで言うところの2017年と思ってください。
売上高比較では、第4四半期も年間も同期比で増加となりました。特に年間売上ではウォルマートとして初めて5,000億ドル(≒53.6兆円!)の大台と超える結果となりました。
売上高で見た場合は順調に事業成長しているようにみえますね。
セグメント別の売上高比較
四半期決算(単位:10億ドル)
年間決算(単位:10億ドル)
セグメント別に見た売上高の推移です。セグメントは大きく3つ、米国内のWalmart U.S.、米国外のWalmart International、会員制スーパーのSam's Clubです。
四半期決算と年間決算を見ますと、どちらも各セグメントは売上高を拡大していますね。特にどこかのセグメントが不調というわけでは無さそうです。
Eコマースの成長率推移
ウォルマートの発表によれば、Eコマースの成長率は年間では44%になりました。非常に高い成長率ですね。
一方で四半期ごとのEコマース成長率を見ると、成長が鈍ってきているようにも見えてきます。
四半期ごとのEコマース成長率
四半期ごとのEコマース事業の成長率の推移です。チャート前半の2017Q1〜Q4(2016年2月〜2017年1月)は着実な右肩上がりの成長でした。
チャート後半の2018Q1(2017年2月〜4月期)に成長率が63%にまで急成長しました。買収したJet.comの効果でしょうかね。
その後も50〜60%台の成長率で推移しましたが、先日の2018Q4(2017年11月〜2018年1月期)での成長率が23%と急落したことが投資家の失望を買ったわけですね。
成長率鈍化の原因の大部分は「想定の範囲内」だったとのことですが、想定外の事としてはホリデーシーズンの品揃え失敗があったみたいです。
同社は最大の売り上げが見込まれるホリデーシーズンでの基本的な品揃えに失敗したとマクミロン氏は同日、アナリストに説明した。
玩具、テレビや他の電化製品など、ホリデーシーズンに高い需要が期待できた商品の在庫が不足。他の商品の在庫を揃えたことが、結果的に「マイナスに作用した」と同氏。
ホリデーシーズンにウォルマートの予想を超えるお客がウォルマートのネットショッピングを利用したみたいで、その事自体は喜ばしいですが、せっかくの機会を損失してしまったのは残念でした。ウォルマートと言えど、ネットショッピングの需要予測と在庫整備を完璧にしておくにはまだまだ課題が多そうです。
ただEコマース成長率低下の要因がウォルマートの人気低迷ではなかったようですので、在庫等の問題に対処していけばまた高い成長率に戻るのではと期待したいです。時間の問題だと良いのですが。
まだまだ店舗売上高が主役のウォルマート
ウォルマートは昨年10月の投資家向けイベントで、会計年2018年(2017年2月〜2018年1月)のEコマース売上高が115億ドルになると予想していました。
Eコマースの売上高は決算で公表されていませんが、仮に米国のEコマース売上高をこの115億ドルとして、米国の既存店舗の売上高と比較すると下記の割合になります。
米国のEコマースと既存店舗の売上高比較(単位:億ドル)
Walmart U.S.の売上高でみると、Eコマースは4%に満たない売上高しかないことが分かります。Eコマースの成長鈍化は問題ですが、その影響は今はまだそれほど大きくないと言えそうです。
とは言え、ウォルマートがもし急成長するならば、成熟した店舗売上でではなくまだ若いEコマースが牽引するはずですので、この割合をどこまで伸ばせるかが成長のカギに思います。
米国の既存店舗の売上高成長率
米国の既存店舗売上高の成長率推移です。こちらはEコマースと違い、じわじわと成長を繰り返しているように見えますね。
特に2018Q3とQ4に他の期間と比べて大きく店舗売上が成長していました。売上の大部分を占める店舗売上が成長を続けているのは良い状況に思いますね。
ちなみにWalmart U.S.の店舗数の推移は以下のようになります。こちらもじわじわ伸ばしている様子が見て取れますね。現在の店舗数は4761店舗となります。
Walmart U.S.の店舗数推移
今のところは店舗数は拡大中ですし、店舗売上は今後もじわじわと成長してくれるのではないでしょうか。
やはりこの店舗ネットワークはAmazonがすぐには真似出来ないポイントですね。
今年もウォルマートは成長を約束
会計年2019年(2018年2月〜2019年1月)の主なガイダンスは下記の通りです。
- 全体売上高の成長率・・・1.5〜2.0%
- 既存店舗Walmart U.S.の成長率・・・2.0%〜
- Eコマース成長率・・・40%
- EPS・・・4.75〜5.00ドル
昨年10月に発表したEコマース成長率の40%はそのまま維持されました。課題がしっかり見えているので対処できるとの考えでしょうか。このまま高い成長率をキープしてくれると嬉しいのですが。
既存店舗も安定の成長率を予定しています。ウォルマートの規模ですと大幅な店舗売上の成長は無いでしょうが、それでも毎年コンスタントに成長しているのは素晴らしいです。
売上高が過去最高の5,000億ドルを突破したことは喜ばしいですが、Eコマースの基盤整備等でコストも年々増加している点は気になります。利益(EPS)がイマイチ伸びないのはその辺に原因があるのでしょうか。
またウォルマートのEコマース成長の鈍化要因はオペレーションミスによるものが主のようですし、お客がウォルマート離れをしているわけではないですから、あまりナーバスに捉えなくてもいいかなと個人的には思いますね。次の四半期決算でEコマース事業がどれだけ立て直されたのか、ぜひ期待しておきたいと思います。
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