少し前のニュースになりますが、Amazonによるホールフーズ買収を受けて、小売業の最大のライバルであるウォルマートが違った角度から反撃に出ていたようです。
ウォルマートによる反撃
アマゾンは、AWS(アマゾンウェブサービス)によって、クラウドストレージとクラウドコンピューティングの分野でいち早くトップに立った。
これに対し、昨今EC分野に積極的な投資を行うウォルマートは、取引先のテック企業にAWSの使用を中止し、他社のサービスに乗り換えるよう要請したのだ。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
ウォルマートはAmazonとの小売店舗での直接対決を前に、まずはAmazonの体力を削る作戦にでたようです。
AmazonのクラウドサービスであるAWSは、現在ではクラウド市場で圧倒的なシェアを誇ります。MicrosoftやGoogleを抑えて、30〜40%のシェアを占めているようです。
Amazon Cloud Growth is Hardly Hampered by the Chasing Pack | Synergy Research Group
当然、ウォルマートの取引先の企業の多くもAWSを利用しているでしょうから、ウォルマートの圧力に頭を悩ませる企業は少なくないでしょうね。
AmazonのビジネスにおけるAWSの貢献度は、下記記事によると2017年第1四半期売上高に占める割合は約10%だったとのことです。また営業利益の面ではその大部分をAWSが稼いだようです。
アマゾン:クラウドマーケットでトップを走る。 同社は2016年第4四半期、パブリッククラウドサービスでグローバルシェアの40%を占めた。アマゾンによると、2017年第1四半期、同社のクラウドビジネスであるアマゾンウェブサービス(AWS)の営業利益は8億9000万ドルに上り、同社の利益の大部分を占めた。同社は、収益の多角化を進めており、主要ビジネスであるEC事業への依存度を下げようとしている。
Amazonの「収益の多角化」の最重要項目であろうAWSに対してウォルマートは手を打ってきたということで、なかなかに痛いところを突いているのかもしれません。
もう一つの戦争:動画コンテンツ
Amazonの収益多角化としてはAmazon Primeの動画コンテンツも挙げられるでしょう。Amazonによるオリジナル・コンテンツも年々増加しています。
List of original programs distributed by Amazon - Wikipedia
そんなAmazon Primeのライバルと言えばやはりNetflixです。Netflixは北米のインターネット・トラフィックの40%近くを占めると言われており、動画配信サービスでは名実ともにNo.1と思います。
そのNetflixへの対抗として、Amazonは2017年に動画コンテンツへの投資を倍増させる予定とのことです。その額は45億ドルにもなるそうです。
対するNetflixは60億ドルを計画しているようで、投資額の面ではNetflixに軍配が上がりそうです。
そんなAmazonとNetflixのライバル関係ですが、面白いことにNetflixはAmazonのAWSの大口顧客でもあるんですね。7年もかけてNetflixのシステムをAWSのクラウドへ完全移行したそうで、この関係はしばらく続くと思われます。
同じ競合関係でも、ウォルマートはAmazonのサービスを使わせないよう圧力をかけたり、Netflixは積極的に活用することで自社ビジネスを拡大したりと、Amazon側も正反対な性格を持つ競合企業たちとの戦いに今後も苦労しそうです。