インターネット・ラジオを展開するパンドラ・メディア(Pandora Media)が四半期決算を発表しました。未だに赤字の同社ですが、決算後株価は+20%近くも高騰していました。
パンドラ・メディアの2018年第1四半期決算
https://seekingalpha.com/news/3352399-pandora-media-beats-0_11-beats-revenue
- EPS:-0.27ドル(予想を0.11ドル上回る)
- 売上高:3.192億ドル(予想を1,521万ドル上回る)
パンドラ・メディア(P)の2018年第1四半期決算はEPS・売上高ともにコンセンサス予想を上回りました。(どうでもいいですがパンドラ・メディアのティッカーはP一文字なんですね。)
利益はまだ赤字ですが、予想よりも赤字幅が小さかったことが好感されて買われたようです。
決算発表後、パンドラ・メディアの株価は+19%も高騰していました。
チャートで見るパンドラ・メディアの四半期決算
売上高、利益の比較(単位:百万ドル)
パンドラ・メディアの売上高等の比較です。
注意事項として、パンドラ・メディアは昨年にオーストラリアとニュージーランドからサービスを撤退させ、さらにチケット販売サービスのTicketflyをEventbriteに売却しました。そのため売上高等の比較はそれらの影響を除外した値での比較となります。
まず売上高は前年同期比で+12%の3.19億ドルでした。SpotifyやApple Musicといったライバルの多い中でもしっかり売上を伸ばしていますね。
一方で粗利益と粗利益率はちょっと下がってました。損失の方も拡大しており、ビジネス自体はまだまだ順調とは言えないように見えます。
有料会員の売上高が大きく成長(単位:百万ドル)
パンドラ・メディアのインターネット・ラジオは3つのプランがあり、広告付きだけど無料のプランと、Pandora PlusおよびPandora Premiumの2種類の有料プランです。
これらを大きく有料会員と無料会員に分けて売上高を見たのが上のチャートです。
広告付きの無料プランのほうが売上高が大きいですが、前年同期比では-3%と僅かに減少しています。
一方の有料プランの方は+63%と非常に大きく売上高が成長しているのが分かりますね。売上高は無料プランの半分ほどですが、この成長率の高さを維持できれば同等レベルまで伸びるのも時間の問題かもしれません。
売上高の大部分を有料会員から得ているSpotifyとは対照的で面白く感じました。両社の方針の違いですかね。
トータルのアクティブユーザ数は減少するも有料会員は増加中(単位:百万人)
ラジオを聴いているアクティブユーザ数は前年同期比で-6%の減少で7,230万人でした。
同じく無料プランのユーザ数も-7%の減少で6,667万人でした。
一方で有料プランのユーザ数は+20%の増加で563万人になりました。ユーザ数に減少傾向が見られる中、有料会員が大きく伸びているのは投資家に好印象を与えたでしょうね。
今のところは圧倒的に数の多い無料プランの会員の広告収入頼りとなっていますが、先程の有料プランの売上増加に見られるように徐々にマネタイズの方向が変わりつつあるのかもしれませんね。
増え続けるライセンスコストが収益改善の足かせ?
パンドラ・メディアの場合、1曲流れるたびにその楽曲のライセンス費が計上されるようで、ユーザあたりの平均ライセンス費(LPU:Licensing Costs Per Paid Subscriber)がユーザあたりの平均単価(ARPU:Average Revenue Per Paid Subscriber)と比べていくら払っているかがポイントです。
まずARPUを見ると四半期ごとに徐々に単価を上げており、17Q1の4.76ドルから18Q1は6.30ドルまで上がりました。
一方でLPUの方も同様に上がり続け、18Q1は4.65ドルになっています。
ARPUに対してLPUがどれくらい占めているかをコスト割合として計算すると、17Q1は62.2%ほどでしたが今は73.8%にまで上がっていました。
当然ARPUからLPUを差し引いた儲けの部分も下がり続け、17Q1の1.80ドルから18Q1は1.65ドルにまで減少していますね。
恐らくは有料会員が増えることでARPUも上がり、相対的にコスト割合も下がるのではと思いますが、ラジオで楽曲が再生されるたびに赤字になるなんて事態にはならないよう有料会員の成長率を維持して欲しいところです。
Amazon EchoやGoogle Homeなどのスマートスピーカーの浸透が追い風に
パンドラのインターネット・ラジオは様々なデバイスやスマホで聴けます。そして今はAmazon EchoやGoogle Homeといったスマートスピーカーにも対応しています。(Spotify等の他のサービスも対応済みですが)
スマートスピーカー市場は今後も大きく成長すると見られますので、パンドラ・メディアにとっては自社サービスとの接点が爆発的に増えるとも捉えられますね。
さらにパンドラ・メディアは今年の3月にデジタル・オーディオのアドテク会社AdsWizzを買収しました。無料プランでの音声広告を強化するとともに、7,300万人いるパンドラ・メディアのポッドキャスト・ユーザ向けに音声広告を提供する予定とのことです。上のチャートで見たように広告収益が減少していますのでその改善の意味合いもあるでしょうね。
正直、音楽ストリーミングサービスはSpotifyが圧倒的に市場を支配していると思っていましたが、インターネット・ラジオの先駆けであるパンドラ・メディアもまだまだがんばっていますね。
彼らのような音楽ストリーミングサービスが中心となって音楽市場を再燃させているようで、良い意味でライバル同氏が競い合えれば音楽市場は更に盛り上がるのではと思います。
ただ何となくですが、パンドラ・メディアはあくまでもインターネット「ラジオ」にこだわってビジネスを進めるような気がしますね。あまり有料会員の増加に固執せず、好きな音楽チャンネルを流して時に広告CMが挟まれるような古き良きラジオ体験を目指しているのかもなとAdsWizz買収も含めてそう感じました。
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