タバコ銘柄は株価の下落が止まらず、それにより配当利回りは上昇してますね。投資対象として見たとき、タバコを取り巻く状況を知っておきたいところです。
主要なタバコ銘柄の株価推移
まずは主要なタバコ銘柄であるアルトリア・グループ(MO)、フィリップ・モリス(PM)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)の2018年株価推移を確認しておきます。
アルトリア・グループ(MO)
- 2018/1/2:$70.74 → 2018/12/28:$48.89(-30.9%)
- 現在の年間配当と利回り:$3.20(6.55%)
アルトリア・グループの株価は年始からV字を描きつつも11月に大きく下落し始め、12月28日の時点で-30.9%の48.49ドルです。
一方の配当については、現在の四半期配当が0.80ドルなので年間で3.20ドルを見込み、配当利回りは3.20ドル÷48.89ドル=6.55%となっています。かなり高配当になってますね。
株価収益率(PER)については、EPSのベースごとに下記となります。
- PER(過去12ヶ月のEPS):12.4
- PER(2018年度予想EPS):12.2
- PER(2019年度予想EPS):11.4
フィリップ・モリス(PM)
- 2018/1/2:$104.39 → 2018/12/28:$67.27(-35.6%)
- 現在の年間配当と利回り:$4.56(6.78%)
フィリップ・モリスの株価は、日本でのIQOS売れ行き懸念で一度大きく下げ、その後も回復することなく12月にさらに下げてました。今年は今のところ-35.6%の下落です。
配当は四半期で1.14ドルですので年間配当が4.56ドルの見込みです。利回りは6.78%です。アルトリアよりちょっと高いですね。
PERは下記の通りです。アルトリアに比べるとちょっと割高ですね。
- PER(過去12ヶ月のEPS):15.7
- PER(2018年度予想EPS):13.4
- PER(2019年度予想EPS):12.7
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BTI)
- 2018/1/2:$67.18 → 2018/12/28:$32.48(-51.7%)
- 現在の年間配当と利回り:$2.696(8.30%)
ブリティッシュ・アメリカン・タバコの株価は年始からずっと下落トレンドのようですね。現在までに-51.7%と株価は半減していました。
配当の方は四半期配当が0.674ドルですので、年間で2.696ドル、利回りは8.30%となっています。8%超えの配当利回りは先の2銘柄に比べてもかなり高配当ですね。
PERは下記の通りです。過去12ヶ月EPSに基づくPERはレイノルズ・アメリカンの買収により一時的にEPSが上がった影響で低くなってます。参考値ですね。
予想PERはこちらの情報を引用してます。全体的には先の2銘柄よりは割安感がありますね。
- PER(過去12ヶ月のEPS):1.47
- PER(2018年度予想EPS):8.49
- PER(2019年度予想EPS):7.91
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タバコを取り巻く現在の状況
タバコ関連の規制強化
最近はタバコ関連の規制強化のニュースを目にする機会が増えましたね。先月はFDAがメンソールたばこの販売禁止を検討中との観測記事がありました。
また若者に人気の電子タバコJUULなどへの規制強化も検討されています。JUULは米国の電子タバコ市場でシェア3分の1を持つそうですが、FDAの動きにより先行きは分かりませんね。
州によっては直接的にタバコ販売の規制強化を進めています。マサチューセッツ州では10代への電子タバコ蔓延を懸念し、販売可能店舗を規制する法案を可決しました。
ニューヨークでは薬局でのタバコ・電子タバコの販売が来年1月1日から禁止されます。影響は500箇所の薬局に及ぶとされています。ニューヨークでは86万人の喫煙者(そのうち13万人が若年者)がいるそうですが、市は3年間で喫煙者を16万人削減する目標を掲げています。
またCVSヘルスのように自主的にタバコ販売を取りやめる小売も増えるかもしれません。ドラッグストアのCVSヘルスは2014年からタバコ販売を中止しています。今のところはウォルマートなどはその動きに追従していないようですが、世の中の動向を見て販売中止に動く可能性はゼロではないのではと思います。
とにかくFDA局長のゴットリーブ氏が若者へのタバコ蔓延を非常に問題視しており、一部メーカーの対応の遅さに疑問を抱いているようです。FDAによる規制強化は一気に進展するかもしれませんね。
THREAD: I'm deeply concerned that kids use of e-cigs is accelerating, and we could see sharp rises in middle and high school use of e-cigs in 2019, on top of the 78% increase in teen use 2018; even despite interventions we’ve already taken and more steps we’ll soon implement. 1/5
— Scott Gottlieb, M.D. (@SGottliebFDA) 2018年12月27日
今の米国でのタバコについては、とにかく若年層への蔓延を止める方向に規制強化が進んでいます。そのため将来の喫煙者数の伸びはあまり期待できないのではと思いますね。
規制強化の中で生き残りをかけた企業の動き
そのような米国の動向を意識してか、アルトリア・グループがJUULの株式を35%取得とのニュースがありました。アルトリアはJUULの経営権は今は持たないとのことですので、戦略的提携の意味合いが強そうです。
さらにアルトリアは大麻の製造・販売会社クロノスへの出資を発表しました。大麻ビジネス参入により新たな収入源を確保したい動きなのでしょう。
フィリップ・モリスは今年6月にカナダのスタートアップと手を組んで新商品開発を始めたとのニュースリリースがありました。
もともとフィリップ・モリスは将来的には紙巻きたばこのビジネスをやめると今年頭に宣言してましたね。IQOSもその一環ですし、新商品開発もそのための投資でしょう。
タバコ会社の現在のビジネスでは、従来の紙巻きたばこの売り上げは成長性がなく、新たな成長ドライバーの確保が急務と言えそうです。
それが電子タバコのJUULだったり、大麻ビジネスだったりするのかもしれませんが、いずれにせよ多額の買収や出資により事業拡大することで延命しなければならないフェーズです。それだけ今のタバコ事業は岐路に立たされているのでしょう。
タバコ銘柄は生活必需品セクターに属してはいますが、今の規制強化の流れやタバコ自体の成長性の低迷を見るに、安全な投資銘柄とは言いにくい状況に思いますね。
このままタバコの販売数が低迷し、規制強化で販売チャネルも制限されると、事業への懸念から株価の方もさらに下がるかもしれません。色々な問題でタバコが不人気銘柄になり放置されるようになれば、シーゲル教授の「株式投資の未来」で描かれていたタバコ銘柄の状況に似てきますが、書籍と同じように投資をして高いリターンを得られるかは全く読めませんね。
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