人工知能やウェアラブルデバイス、ドローン、自動運転車など、最近になって様々な技術がトレンドになっています。それらが盛り上がれば盛り上がるほど、それを下支えするためのデータセンターも儲かるだろうと思われます。
人工知能の盛り上がりと、それを支えるデータセンター
今やどこもかしこも人工知能だらけな印象です。とある調査によれば、2030年には国内のAI関連市場規模は86兆円にもなると試算されています。
人工知能を実現するための技術である機械学習や深層学習では、大量のデータを集めて分析することが不可欠です。そのためには計算機が多量に必要となりますので、自社で計算機を調達するか、あるいはクラウドを使うか、といった対応が考えられます。いずれにせよ、自社内またはクラウド内にある多量の計算機の面倒を誰かが見る必要が出てきます。
そこで登場するのがデータセンターです。データセンターは多量の計算機を設置・管理できる巨大な建物で、空調設備やセキュリティ設備を万全に備えることで、計算機を安心・安全に保管してくれます。
データセンターとしては顧客の危機を安全に保管するための立地条件などが大事になってきます。自然災害に強い場所かどうか、といった観点です。例えばCBREのレポートに優れたデータセンターの品質を評価する観点が示されています。
http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0437177_02.pdf
データセンタービジネスの分類
先程のCBREのレポートにデータセンタービジネスの分類が示されています。
面白いのは、データセンターとして提供するサービスのレベルに応じて、ITビジネスなのか不動産ビジネスなのかが別れてくる点です。建物と空調等の設備、そしてネットワーク接続までを提供する形態は基本的に不動産ビジネスとみなされ、さらにサーバーやアプリケーションなどまで含めてサービスにすると所謂クラウドビジネスとみなされるようです。
クラウドビジネスですと、AmazonのAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftのAzure、そしてGoogleのGoogle Cloud Platform(GCP)が市場シェアを握っています。特にAWSは圧倒的なシェアを占めていますね。彼らの武器は優れたITサービスを提供する部分で、不動産としてのデータセンターについては本業とは言い難いですし、むしろ不動産ビジネス部分は専門のデータセンター事業者に彼らはお任せしています。
つまり、人工知能がますます盛り上がり、人工知能の関連ビジネスも拡大し、AmazonやMicrosoft、GoogleといったITの巨人たちも人工知能その他のITサービスを拡大せざるを得なくなると予想すると、それを支えるデータセンターも数を増やしていかざるを得ないのではと思います。AIが流行ればデータセンターが儲かる、そういう状況になるのではないでしょうか。
調査会社のIDC Japanのレポートでも、データセンターが新設されている現状を報告しています。国内も海外も、データセンター需要は拡大中のようです。
~事業者データセンター新設は拡大、企業内データセンター新設は抑制傾向~ 国内データセンター管理者調査結果を発表
代表的なデータセンター銘柄
Equinix(EQIX)
Equinixは全世界にデータセンタービジネスを展開するグローバル企業です。現在、44の都市で182のデータセンターを運営中です。日本でも東京と大阪に合計12のデータセンタが存在します。2015年3月にはS&P500へ組み入れられました。
彼らのデータセンターを利用する企業には世界中のトップ企業が含まれます。AmazonやGoogleも彼らの顧客ですね。
Equinixの主要な顧客はAmazonなどのクラウドの他にも、NetflixやSpotifyといったコンテンツ企業、AT&Tやベライゾンなどの通信事業者、金融事業などが含まれます。非常に多くの大企業の基盤を支えていますね。
経営状況も好調で、この2017年第2四半期で58期連続の増収を達成したとのことです。ここ5年間の株価推移を見ても、好調に株価が成長している様子が見てとれます。
Digital Realty(DLR)
Equinixと同じようにワールドワイドでデータセンタの開発・運用を手がけているのがDigital Realtyです。こちらもS&P500銘柄です。現在、12カ国33都市に157の施設を保有しています。
最近では日本に初のデータセンターを開設しました。開設と同時に完売状態だったようで、既に2棟目を建設するための用地を押さえてあるとのことです。
下記は現在の顧客トップ20とのことで、Digital Realtyの最大の顧客はIBMです。IBMのクラウド事業を支えているようで、Watsonなどの人工知能もそこで動いているのでしょうか。その他、OracleやFacebook、AT&T、Verison、Amazon、Uberなど大手企業が名を連ねていますね。
先程のEquinixも4番目のお得意様なのが興味深いです。Digital Realtyがデータセンターという建物を開発し、そこをEquinixがリースして自分のビジネスをしているようです。先程の記事にも
こうした独特の立ち位置であるため、世界中のコロケーションサービス事業者やクラウドサービスプロバイダーは、デジタル・リアルティにとって「競合」であり、同時に「顧客」でもあるという。たとえば「エクイニクス(Equinix)は競合でもあるが、当社の最大手顧客5社のうちの1社でもある」と、CEOのスタイン氏は説明する。
と説明がありました。
Digital Realtyも好調な株価を見せています。ここ最近はやや停滞気味ですが、データセンター需要がおさまらない限りはビジネスも拡張し続けるのではないでしょうか。
データセンタービジネスへの投資は有りか否か
EquinixもDitital Realtyも、データセンターというIT関連のビジネス企業に見えて実態は不動産ビジネスで、実際彼らはREIT(不動産投資信託)になります。なぜREITなのかというと理由の一つは法人税回避のようです。米国では収益の9割以上を配当金として支払うことで法人税回避ができるそうです。
FT: Equinix、REITへの転換を目指すと発表... - Varecs Partners Limited | Facebook
個人的には最初に挙げたロジックの通り、人工知能や他のテクノロジーの発展とともにデータセンターの需要も増えると思いますので、データセンタービジネスへの投資は面白いのではと感じます。あくまで不動産投資をしているという観点を忘れないことも大事ですね。