Business Insiderの記事に興味深いものがありました。
今後、より多くの企業がクラウドへの以降を進めるであろう中で、その影響を最も強く受けるかもしれないIT企業についてです。
クラウドの普及がIBMとオラクルに与えた打撃
今後、より多くの企業がクラウドへと移行するにつれて、オラクルとIBMは最下位争いを演ずるはめになるかもしれない。
AlphaWise/モルガン・スタンレー CIOレポートによると、両社はこの先3年間、クラウドへの移行の影響を受けて、企業のIT予算のかなりの部分を失うことになる。企業のCIO(Chierf Information Officer)たちは、2020年末までに自社の仕事の46%はクラウドで行われるようになると考えている。一方、自社運用を想定しているのは、34%のみだ。
調査対象となったアメリカとヨーロッパの100人のCIOたちは、今後、IBMへの予算を13%、オラクルへの予算を11%削減すると考えている。
非常に興味深いレポートが紹介されています。この記事によると、
- 業務の半分はクラウドに移行する
- 自社のみの運用を想定する企業は全体の3分の1
- IBM、オラクル、EMC、HPE、NetAppは今後3年間で予算の減額を予定
といった回答結果が得られたとのことです。
予算減額を指摘されている企業も一応はクラウド事業への注力を表明していると思いますが、欧米のCIOたちはそれには目をくれずにAWS、Microsoft、Googleといったベンダーへの予算増を予定してるようです。
<スポンサーリンク>
大手ベンダーは本当に危ない?
この先の3年間、名指しされた大手ITベンダーたちが何もしないはずはありませんよね。特にハイテクセクターは技術革新の激しい業界ですし、3年と待たずに大きな変化が訪れても不思議ではないと思います。
また現状では記事で言われるほどに悲観的かどうか、判断が分かれそうです。例としてオラクルの状況をみてみます。
米オラクルによるクラウドコンピューティング分野への進出は勢いづき、4四半期連続の増収につながった。
同社が21日発表した3-5月(第4四半期)決算では、総売上高はアナリストを容易に上回った。クラウド事業は3-5月期に58%増収となった。一方、従来型の業務用ソフトの販売の目安となる新規のソフトウエアライセンス収入は5%減で、前四半期は16%減収だった。
直近のオラクルの業績は、まさにそのクラウド事業の好調により増収になっています。上手くクラウド事業への転換を進められている印象です。
レガシーエンタープライズソフトウェアベンダーは衰退しつつあるとも言われているが、これは少し誇張され過ぎているかもしれない。Oracleの業績発表からは、従来の顧客ベースを「XaaS」の顧客に転換し、新たな収入の柱とするための戦略と活動が見て取れる。
オラクルのような大手ベンダーの顧客の大半は大企業でしょう。そういった顧客のシステムは急に革新的なクラウドへ移行することは困難であったり、法規制やデータの秘匿性のため顧客が自社から外に出したくないと考えるため、オラクルとしては顧客の環境内(オンプレミス)にプライベートのクラウドサービスを構築する戦略を取っているようです。
また記事によれば既存顧客の中でクラウド移行に積極的な企業はオラクルのパブリック・クラウドを利用する移行を示しており、新規顧客の獲得よりも既存顧客のクラウド化をどういう形でサポートできるかにオラクルは重きを置いているようです。
AWSとオラクルのクラウド移行に対する考え方の違いを解説した記事です。両社の相違点と共通点について説明されており非常に参考になります。
クラウドの話をするときには、その顧客の業種やシステム規模などが異なると当然クラウドへの期待も変わってくると思います。AWSやMicrosoftを積極的に選択する企業もいれば、既存の資産活用を重視してオラクルなどの付き合いの長いベンダーのクラウド戦略に乗っかる企業も少なくないでしょう。
またクラウド移行が全ての最適解ではないのも確かです。最近では、AWSなどのクラウドサービスから自社のデータセンターへシステムを戻る“脱クラウド”の動きも出てきています。またそのような動きを支援するベンダーも出てきました。まだまだクラウドを巡る攻防は続きそうです。