バフェット銘柄の一つであるクラフト・ハインツが四半期決算と2017年通期決算を発表しました。決算内容は市場予想に届かない数字で株価にも影響を与えてしまいました。クラフト・ハインツをとりまくビジネス環境の厳しさが伺えます。
クラフト・ハインツ(KHC)の四半期決算
- EPS:0.90ドル(予想を0.05ドル下回る)
- 売上高:68.8億ドル(予想を4,000万ドル下回る)
クラフト・ハインツの2017年第4四半期決算は、EPS・売上高ともにコンセンサス予想に届かない数字でした。
売上高自体は2四半期連続の増収とのことでしたが、それでも市場予想には1歩及ばずでしたね。
株価はガクッと下がり、そこから少し持ち直しましたが今後の動きが気になります。
チャートで見る決算内容
前年との売上高比較(単位:百万ドル)
四半期売上高
前年同期比の四半期決算で売上高を比較してみます。売上高は+0.3%ほどの増収で約68.8億ドルでした。
一方、為替の影響を除いたオーガニック売上高で比較すると、-0.6%の減少となっていました。ビジネスの実態としては売上はマイナスのようです。
年間売上高
2016年と2017年の年間売上高を比較しても同様の傾向が見て取れます。売上高では+0.97%の増収ですが、為替の影響を除いたオーガニック売上高ですと-1.0%の減収でした。
この1年、クラフト・ハインツの製品が全く成長していない状況がうかがえます。
地域別の売上高
為替の影響を除いたオーガニック売上高について、2016年と2017年の年間売上を地域別に比較しました。
主力地域の米国で-1.5%の減収、カナダでは-7%の減収となっていました。北米地域での苦戦が年間の減収に大きく影響を与えていますね。
対して欧州とその他地域ではそれぞれ+0.8%と+5.3%の増収となっていますが、北米の減収を補えるほどには売上高は伸びなかったみたいです。
売上高では米国・カナダの北米地域で全体の8割近くを占めており、この主力地域でビジネスが弱っている点がクラフト・ハインツの懸念ですね。
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クラフト・ハインツ不調の背景には消費者嗜好の変化
クラフト・ハインツといえばケチャップやソースが日本では有名ですが、本国アメリカでは「オスカー・マイヤー」ブランドの加工肉などの加工食品も取り扱っています。
しかし最近の米国ではより新鮮な肉や野菜、オーガニック食材などを求める健康志向がトレンドとなっており、クラフト・ハインツを含む加工食品メーカーは苦境に立たされています。
米国では加工肉市場そのものが縮小しており、さらにクラフト・ハインツのシェアも低下しているようで、早急に手当をしないとビジネス成長が見込めない状況です。
現状打開のためには大型買収が必要?
クラフト・ハインツは、もともとは2015年にバフェット率いるバークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルがクラフトフーズ・グループとハインツの合併を主導することで誕生した会社ですね。
特に投資ファンドの3Gキャピタルのやり方は、大手ブランドをM&Aさせてコスト削減策を推進し、コスト削減がこれ以上効果を望めなくなるとまた大規模なM&Aを行い、再びコスト削減に取り組むという方法です。クラフトフーズとハインツのM&Aもその一環でした。
昨年にクラフト・ハインツがユニリーバを買収しようとした動きも3Gキャピタルのやり方でしょうね。こういった大型買収を提案するということは、クラフト・ハインツのコスト削減による事業立て直しは既に限界に達していると考えられそうです。
3Gキャピタルはコスト削減は実行しますが、消費者の嗜好の変化に何か策を打てるわけではないですし、市場もそれを理解しているでしょうから、今回の四半期決算の不調によりクラフト・ハインツに買収を求める圧力が高まってきました。
ベルナード・ヒース最高経営責任者(CEO)は16日、ここ数カ月でバリュエーション面の魅力が増しており、買収取引はあり得るとの考えを示した。ただ、標的とする具体的な企業名は挙げなかった。同社は1年前に英蘭系ユニリーバに買収を提案したが、拒否された。
健康志向トレンドに完全に乗り遅れたクラフト・ハインツがビジネスを立て直すには、やはり大型買収によるテコ入れが必要になってくるのでしょうか。ユニリーバ買収提案からちょうど1年経ちましたし、再びクラフト・ハインツが大型買収に動き出してもおかしくないでしょうね。
先日のペプシコやコカ・コーラもより健康的な炭酸飲料にシフトせざるを得なくなっており、こういった消費者の嗜好の変化に影響を受ける企業はまだまだ増えていきそうに感じます。
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