IBMが2017年第4四半期決算を発表しましたね。既に報じられているとおり前年同期比で売上高が久々(6年ぶり!)に増収だったようで、決算内容としては悪いものではないのかなと思っていましたが、その後のIBM株価は下落に転じました。
IBMの2017年第4四半期決算:概要
- 売上高:225億ドル(予想:220億6000万ドル)
- EPS:5.18ドル(予想:5.17ドル)
- ガイダンス:2018年EPS 13.80ドル〜(予想:13.92ドル)
四半期決算の内容としては、売上高とEPSで市場予想を上回る内容でした。
ガイダンスでは2018年通期のEPSを13.80ドル以上としており、市場予想の13.92ドルに届くかどうかは疑問ですね。
久々の増収となった決算ですが、利益についてはまだまだ好調とは言い難い年になりそうな点が投資家の懸念となったのではと思います。
増収に転じたというものの・・・
第4四半期の売上高は前年同期比で4%増収ですが、為替の影響を除くとわずか1%の増収でした。まだまだ力強い増収とは言い難い状況のようです。
セグメント別に売上高を見てみると、1部門(Systems)のみが大きな増収になり、他の部門は前年と同じかマイナスの売上高でした。
「Systems」の売上には昨年リリースしたメインフレームの新製品が大きく貢献していました。同製品のセキュリティ機能が好感されたのと、製品ライフサイクルに上手く乗れた面もあるのではと思います。
それよりも、IBMが力を入れているWatsonを含む「Cognitive Solutions」の売上高が前年同期比と同じ(Flat)な結果だったのが問題でしょうね。人工知能を巡る争いがますます激化する昨今で、売上高が伸びていないというデータは投資家の失望を買ったのではないでしょうか。
残りの「Global Business Services」と「Technology Services & Cloud Platforms」も売上高はそれぞれマイナス2%とマイナス4%でした。クラウド単体ですと増収だったようですが、部門全体では減収の結果ですね。
結局、IBMの第4四半期決算の増収を牽引したのは、皆が期待していた人工知能やクラウドといった新ビジネス・新製品によるものではなく、(新製品ではあるものの)従来ビジネスのメインフレームやサーバといったハードウェア製品だった点で、市場の期待を裏切る結果になったことが株価下落の一要因に思います。
また上の表の粗利益(Gross Profit)がすべての部門で前年同期比マイナスとなっているのも気になりますね。やはり増収増益を達成するまでは楽観視できない状況でしょうね。
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とは言え成果が出てくるのは恐らくこれから
人工知能やクラウド、IoT、ブロックチェーンといった新技術・新ビジネスへの転換を模索しているIBMですが、劇的な変化はまだないながらも少しずつ成果を積み上げている途中ではと思います。
例えばWatsonソリューションの一つWatson Healthでは150以上の病院や組織で利用され、学習により13種類の癌腫瘍に対応しているようで、1年前の4種類から大きく飛躍しています。
またブロックチェーンを活用して食の安全を管理する試みを昨年発表しており、昨年12月には中国のウォルマートとJD.comとともに食の安全管理に取り組む発表をしました。IBMはブロックチェーンに関して早くから取り組んでいますので、いち早くブロックチェーンの大きなビジネス化を期待しますね。
久々の増収という明るい話題と思いきや市場の期待の高さからまだまだ株価の冴えないIBMですが、2018年にどれだけ挽回できるかがその後の行く末にも影響しそうです。油断できない1年でしょうね。